学生団体ivoteは、「若者の投票率向上」を目的とした団体です。が、なぜ若者の低い投票率は問題なのでしょうか、、、
若者に向けた政策が足りないから?
選挙に行くことが当たり前だから?
「若者の投票率」に対する問題意識を持っている人は少なくないと思います。しかし、実はみんなが同じ問題意識であるとは限りません。今回はそれを2つに分けてして考えてみたいと思います。
☆この記事で分かること☆
・日本の投票率の現状
・若者の低い投票率がなぜ問題か
シルバーデモクラシーに対して
1つ目の「なぜ若者が選挙に行かなくてはならないのか」という1つの答えは、「シルバーデモクラシー」というキーワードから考えることができます。
シルバーデモクラシーとは
シルバーデモクラシー(シルバー民主主義とは?)
――少子高齢化の進行に伴って、有権者人口に占める高齢者(シルバー世代)の割合が増加し、高齢者層の政治的影響力が高まること。
コトバンク https://kotobank.jp/word/シルバー民主主義-191559#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
このように、若者の投票率が低いと結果として政策的アウトプットが若者に不利になる(なっている)立場から批判するのが一つ目の立場です。
政治家は、当然選挙での当選を目指します。選挙に必要なものは票です。票を獲得するには誰にアピールするべきでしょうか。これを年代に分けて考えてみます。
これは世代別有権者数を表したグラフです。どこからどこまでを「若者」と線を引くのかが難しいですが、「若者の影響力がない」とまでは言えなさそうです。
しかし、若者は高齢者に対して投票率が低い現状があります。
例えば、2018年の衆議院選挙です。
10代 | 約40% |
20代 | 約33% |
60代 | 約72% |
70代 | 約60% |
参考:総務相「衆議院議員選挙における年代別投票率の推移」http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/
このように、世代によって投票率は大きく異なります。ちなみに、地方選挙では、20代が10%代を記録することもあります(例:2017年千葉市長選挙)。
これは大きな違いです。これと人口を掛け合わせて世代別の影響力を見てみます。(実際に投票した人の、年齢別の割合)
これだと、だいぶ違って見えます。政治家が当選するためには、比較的高い年齢層にアピールすることが合理的になります。
つまり、政治家が高齢者にアピールするメリットは以下の2点だと言えます。
- 数が多いから票になる
- 投票に行くから票になる
また、『これをやれば、若者みんなにアピールできる!!』
という政策が分かりにくい。という問題もあります。高齢者は「年金」などみんなが求めている政策が分かりやすいです。一方若者の求める政策は、子育支援?学費の無償化?これでは、政治が高齢者重視になっちゃうぜ!!というのがシルバーデモクラシーであり、今回の問題提起です。
このように、政治における影響力の全てを単純化して説明できるわけではありません。しかし、考えるヒントにはなると思います。
若者が投票に行くと
若者が投票に行っても、実際の人口の差を埋めることはできません。しかし、投票率が上がることで、いくらか政治の目を若者に向けさせることはできるでしょう。
これが、若者の低い投票率が問題である1つの理由と言えます。
民主主義における主権者として
今回は、若者の投票率が低いという問題点を、民主主義の担い手としての在り方という観点から問題意識を持つ考え方です。簡単に言えば、「選挙にすら半分も行かない若者。これからを担う主権者がこれで、民主主義国家は大丈夫かよ!」というものです。
民主主義とは、簡単に定義できませんが、「一人ひとりが主権者となって国や地域に関わるもの。社会の意思決定に当事者意識と責任を持つもの」としてみます。
1人ひとりが政治家 というイメージです。
「投票していないから主権者ではない」とは必ずしも言えません。それでも十分な指標にはなりえるでしょう。2017衆院選のように若者の3人に1人しか投票に行かない現状は危惧されます。
もう少し問題提起をしておきます。
例えば、電子投票で「頑張らない選挙」が実現した時に。いや、民主主義とは「頑張る」ことが本質だ。という立場を取りうるのがコチラです。投票に行くと、1000円もらえる仕組みがあるとします。1000円のために投票に行くとは何ぞや!という反対の態度をみせうるのがコチラです。
若者が投票に行くと
主権者としての一つのステップをクリアしたと言えます。しかし、若者が投票に行くだけがゴールではありません。
「主権者」として
- 社会問題に興味を持つこと。
- 投票以外の政治参画をすること。
- 選べれた政治家を監視すること。
等が更に求められるでしょう。
2つの問題意識の違い
ここまで、2つの問題意識を解説してきました。
シルバーデモクラシーを食い止める手段として主権者であることを若者に求めたり、主権者であることの一つの指標として投票率を見ることができるように、2つの問題意識は矛盾しているものではありません。
一方で同じ立場に立っていない以上、何らかの対立が生まれることもあります。2つの違った問題意識を想定して、どのような違いが生まれるか考えてみましょう。
シルバーデモクラシー | 民主主義における主権者 | |
選挙に行きさえすればよいか? | 若者に政治の目が向けば〇 | 主権者として、議論し考えることが必要だ。 |
高齢者の投票に行かない人は? | 問題の対象外 | 議論し、投票すべきだ |
義務投票制は? | 投票率が上がれば〇 | 「罰せられるから」という動機で良いのか |
投票率が0では! | 政策で不利になる層がいなければ、、、 | 民主主義として問題外! |
このように整理してみると、2つの態度が違っていることが明白になると思います。民主主義というものへの向き合い方にもいろいろ違いがありますね。
まとめ
①日本の若者の投票率の現状
- 10代は、約40% 20代は、約33% 世代別でめちゃくちゃ低い(2018年衆議院選挙)
- 地方選挙では、20代が10%代を記録することもある。
②若者の低い投票率が問題な理由
- シルバーデモクラシーになるから
- 民主主義の在り方として良くないから
今回挙げた2つの考え方をヒントに「若者の投票率の問題における本質は何か」ということに向き合う契機になれば幸いです。
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