学生のみなさん!自分が興味のある社会問題の「政策」を、できるだけ具体的かつ現実的に考えてみてください。簡単ではありませんよね。
実は毎年夏、この「政策」について7泊8日で徹底的に向き合うコンテストが開催されています。運営しているのは「学生団体GEIL」(https://waavgeil.jp)なんと、大学生です。
大学生が政策立案コンテスに臨む意義はどこにあるのでしょうか。彼らのコンテスにかける想いとは。
そこで今回、GEILの代表を務めている東京大学2年の井口彰太さんと、副代表の早稲田大学2年の清水創太さんにお話しを伺いました。
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GEILの政策立案コンテストとは?
ーーGEILの政策立案コンテストはどのようなものですか?
(以下井口さん=井口、清水さん=清水)
井口 GEILの政策立案コンテストは、夏に7泊8日で行います。自分が将来、社会を変えていこうと思っている学生に来てもらい、国単位で物事を考えます。初対面の人と価値観をぶつけながら合意形成をしていくなかで、たくさんの学びがあります。
実際のプログラムでは、机上の空論や学生らしさに逃げたくないと思っています。そのため学者や政治家など有識者の講演から始まり、フィールドワークやヒアリングを通して実際に問題解決にあたっている方や、被害を被った方の現場の生の声を聴く機会も用意しています。
さらに官庁に伺います。ここでは政策のプロである官僚から直接、問題の本質を捉えた話を聴くことができます。また、考えがまとまってくる5日目には官僚らによるコンサルテーションを行い、各チームの政策案を敲いてもらいます。 最終日には、ぶつかり合いながら練りに練った政策を官民学の専門家の方に審査していただきます。
ーー参加される方に特徴はありますか?
井口 7泊8日、2万8千円(参加費用)は軽く考えられません。それでも我々がやってることに価値を感じて、参加の意義を突き詰めていらっしゃる方々が参加します。
参加者さんは本当に多様ですが、他のイベントに比べた特徴だと官僚志望の方が多いです。
ーー学生の政策立案で大切にしてることは何ですか?
井口 社会の将来像を描くことです。政策を問題解決の手段に置いた場合、「問題とは何か」がカギです。それは理想と現実のギャップになります。では、問題を見つけるには「自分が何を理想とするのか」が大切になるはずです。
それこそ政治・政策の分野に進む人であれば、何を理想とするのかは突き詰めて考える必要があります。一方で現場の現実とすり合わせながら、理想について考え続ける環境は、大学生にはあまりありません。
もちろんハードではあります。そこでGEILスタッフがファシリテーションや知識面のサポートも補います。
ーー具体的にはどのようなサポートですか?
井口 知識面のサポートはGEIL運営メンバーのケース局が担当しています。参加者さんの知識面のサポートをするためには膨大な知識を自分の中で体系化し、「使える知識」とする必要があります。参加者さんの事前知識を整えるため、議論の基礎としてもらうために、300ページ程度の資料集も作成します。
一方で、7泊8日とハードなイベントにもなるのでメンタル面のケアも欠かせません。学生対応局が徹底したケアを行なっています。
GEIL2019のコンセプト
ーーコンテストは毎年開かれていますが、今年のポイントはどこにありますか?
井口 GEILでは大きなミッションである「政策を通じて人と社会を変える」は一貫していながら、毎年自分たちのやりたいコンセプトを問い直しています。
我々は「社会変革の主体者を輩出する」と決めました。
現状、学生に不満を聞いたら出てくるとは思いますが、そこを掘り下げて考え続ける人は多くないと考えています。もしくは無関心な人、何もできないと諦めてしまう人もいます。
行動を起こす人がいても、感情から来るデモや限られた情報による一面的な批判、政治信条にとらわれていて、目の前のことを真摯に見つめていないことも多いです。
反対にGEILは主体的・論理的・多面的に希望を持って考え続ける場です。将来の社会のあるべき姿を主体的に考え、行動に起こせる人が僕らのコンテストから出てくればいいと思います。
ーー「政策立案コンテスト」という形式を取る理由は何ですか?
清水 政策から様々なものを学べます。特に合意形成や正当性の担保ところはビジネスとは違って政策だけにある魅力です。
このコンテストはまさにその場で、そのような能力を持った主体的なリーダーを輩出したいです。
井口 僕らのコンテストは4人1組を組んでもらいます。そこにGEILのスタッフが一人つきます。
学年・学部・出身地・出身校がばらばらになるように組んでいます。問題の原因を考える上で、比較衡量や取捨選択が行われます。「自分が何を大切にしているか」という根本的な部分がぶつかりあうなかで、どう合意を取るのかは難しいです。
テーマは国の政策ですから、1億2000万人に納得してもらえる正当性という意味での合意形成も難しいです。その分かけがえのない経験にもなります。
今年のテーマ「外国人政策」について
ーー今年のテーマは「外国人政策」とのことですが、どうやって決めたんですか?
清水 団体内で2回ほど選考過程を経て決めました。
条件として、問題のなかに様々なアクターが存在するのは、思考をするうえで重要です。また、「今学生である私たちが考えるべきか」も欠かせません。
ヨーロッパの外国人政策では、技能実習生のように入ってきた外国人の2世3世とどう関わるのかが問題になっています。これは将来の僕たちの姿だと考えることができます。
井口 今日本は外国人政策の変革期です。我々が20年30年後に、40代50代という社会の中心の一人として動いている頃、外国人との共生は問題になりうるでしょう。
将来問題が発生しうるもので、現状動いていて社会的な話題性もあり、先行事例がヨーロッパにあります。一方で、日本では制度的に整ってなくて、基礎自治体も何をしたらよいか分かっていない。
日本の理想像、「どういう日本を描くか」という部分も議論に絶対組み込まれてきます。今回掲げた「社会変革の主体者」としても必要な要素なので、僕らとしても楽しみです。
取材を終えて
このイベントの特徴は政策という最終的なアウトプットが求められることにあります。「何かを決める」。それは同時に、多様な選択肢から何かを諦めることにもなります。
簡単なことではありません。一方で、現実の政治では「決定」からは逃げられません。
難しさや衝突、葛藤をくぐりぬけた参加者の方々が、大学という学び舎に戻った時。目の前の学問はどう映るでしょうか。
昨年度よりGEILとの交流がありますが、彼らのコンテストにかける想いは計り知れません。
正生 雄大
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