SNS上の政治活動は若者にどのような影響を与えているのか?
ーーここ最近でSNS上の政治活動はよく見かけるようになりましたが、それには何か背景があるのでしょうか?
政治家の活用動機は、自身の研究のテーマでもあるのですが、議員がSNS 活用に至る要因には、主に4つあります。(1)先行者が使っている同調意識・減点主義、 (2)新型コロナや社会的な要因で使わざる得ない環境変化、(3)経済的理由、(4)組織コミュ ニティが薄くなったことにより浮動票の獲得に流れる、この4つの要因があることが研究調査からは、明らかになりました。
(1)については、ソーシャルメディアの登場によって先行者達である政治家のインターネット活用が拡大し、「そこに乗り遅れるわけにはいかない、やらなきゃ駄目だよね」という同調意識が徐々に芽生え 始めたことです。
(2)については、社会的な要因によってネット活用以外の手段がないからやらざる得なくなって しまったことでですね。ここで述べている社会的な要因とは、2013 年にネット選挙法は改正され、候 補者はインターネットを活用した選挙運動が可能になり、候補者は新たな手段として、ネット活用を やらざる得なくなることや、昨今の新型コロナウィルスの影響により、3密を避けるために新たな選 挙運動のあり方としてやらざる得ない手法として、議員のネット活用は増えていることです。
(3)については、ほとんどの議員の場合は、初立候補者として選挙活動を行う際は、資金面の苦労があるので、その際に少しでも広報手段として導入するといいます。
(4)については、現在の生活様式の多様化が進み、地域コミュニティや自治会などの組織が減少しきた背景があります。以前に比べて地域コミュニティや自治会などの組織が薄くなったということは、組織以外の票を獲得する必要性が出てくるということです。この現状は、現職政治家にとって、自分が持っている組織票だけでは薄くなってきた、戦えなくなってきたということを示しています。つまり、政治家にとっては、浮動票のウェイトが現在大きくなっているという状況がありますよね。では、その浮動票の対象になるユーザーがどのようにして候補者の情報を検索して収集しているかというと、 インターネットが考えられるでしょう。この浮動票を掘り起こすために、政治家は、日々SNS を使わざる得な いのではないかという仮説がここから浮かび上がってきます。従来組織票を掘り起こすためには、ネッ トを使っていない高齢層が組織していることが比較的多いためネットからはアプローチできないので 活用に適していないことも同時に考えられますね。
ーー従来のアプローチ・コミュニケーションとは全然違いますね。
日本はネット選挙解禁時から国民無視のコミュニケーションだと言われてきました。理由として政治家はコミュニケーションというと発信に重点をおくことが多いことからです。しかし、実際にコミュニケーションとは受信から始まるものですよね。発信するためには受信から始めなければいけません。受信とは何かというと、選挙の場合は国民の潜在意識やニーズがどこにあるのかを把握することです。ただこれは政治家側の意識が変わらないとどうしようもないのです。もし政治の本質が、行政という国の権力と国民との間、有権者との間の繋ぎ役と仮定するならば、政治はコミュニケーションの塊ですよね。どんなに立派な政策だとしても、それを国民に伝わらなければ意味がありません。理解してもらい指示される過程を経て、与党としての信任を得ることが非常に重要です。その信任を得る作業としてもコミュニケーションを重視した広報発信戦略は今後も欠かせないものでしょう。
ーーSNS上の政治活動は若者たちにも影響を与えていますか?
この浮動票の中に若者の票が多く含まれているため、SNSを活用するにあたっては若者の視点を取り入れることも大切でしょう。政治家が主体的にSNSを活用することとメディアのサービスも発達することによって、若者に入ってくる情報も増えてくると思いますし、双方向のコミュニケーションも可能です。これまでは学校の社会科で一方的に政治の授業を受け、地元で演説でも行われない限り、政治家は遠い存在として捉えられていました。しかしSNSの働きかけによって、政治に無関心と言われる若者にとって、政治をより身近に、フランクに捉えることができるようになると思いますし、政治家をより身近に捉えられる機会になるでしょう。政治というワードには、ピンと来なくても、SNSというワードには、ピンとくる若者はいると考えます。SNSの活用によって、政治家がより身近になることで、結果的に若者にとって政治が身近に感じられることに繋がってくる。SNSは若者と政治をつなぐ役割を秘めていると思います。
ーーSNSが若者の政治無関心を解決してくれると期待したいですね!ここまで伺っていると、今や政治活動に不可欠のように思えますが、政治家がSNSを利用する際にあたって、メリット・デメリットなどはありますか?
他のメリットとしては、政治家はコストをかけずに支援者を募り、ブランディングできること。マスコミを挟まない生情報を届けることによって、さらに有権者にとっても投票材料が増え、政治の可視化に繋がります。
一方デメリットも少なくありません。例えばデマやフェイクニュース、炎上、誹謗中傷などネット上で発生するトラブルやリスクを無視できないのが現状です。とある野党議員さんはインタビューの際に、Twitterの140文字では伝えることに限界があるため、毎回ネガティブチェックをして炎上を未然に防いでいるとおっしゃっていました。また過激な議論を目にした中間層が政治・社会問題から関心を失うこともあり得ますし、意見がぶつかることで二極化が進む恐れもあります。
ーー炎上を未然に防ぐには徹底的にチェックしなければなりませんね。逆に炎上をあえて狙うような方もいるのでしょうか?
中にはあえて炎上マーケティングを使われる方もいますね。日本維新の会の音喜多さんにインタビューさせていだいた時、「票というよりもファンやフォロワーを獲得するためには、炎上という火薬庫に手をつけなければいけない時もある」とおっしゃっていました。火薬庫に手をつけることで支持につながることもあれば、信頼を落とすこともありうるというリスクを伴う行動ですが、日々そのようなリスクを冒さなければ、政治家への関心や支持はなかなか伸びないとのことです。
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