【論考】いま政治家の情報発信に求められるものとは:諸外国リーダーのSNS分析から見えた日本の課題“私が総理のSNS担当だったら”PART2

【論考】いま政治家の情報発信に求められるものとは:諸外国リーダーのSNS分析から見えた日本の課題“私が総理のSNS担当だったら”PART2

日本政府・首相SNSアカウントについて

日本は現在、政府からの呼びかけとして首相官邸の公式HPを中心にTwitter及びInstagramを紐付けている。安倍総理のTwitter(191.7万 フォロワー)は、主に首相官邸のHPからの引用した投稿がメインであり政務の秘書が行っていると推測できる。

Instagramの内容は官邸と安倍総理のアカウントの内容は同じだった。どちらも公務内容の報告型を取っている。

画像8
画像9

今回炎上した動画について

原点回帰する。星野さんの「うちで踊ろう」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出自粛が求められる中、星野さん自身がインスタグラムで発表した曲だ。「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?」と呼びかる星野さんのこのアイディアは画期的であったことからも、SNS上でさまざまなコラボ動画が上がり、三浦大知や高畑充希、香取慎吾など多くの著名人も参加していた。

炎上していたコメントの中身

解析していくとSNSで指摘されていた点は主に以下の三つだ。①星野源さんを巻き込まないでほしい(便乗するな)②一国のリーダーが緊急事態にどうしてこんな動画をできるのか(無神経すぎる)③自粛を要請するならば現金給付または補償をセットにした経済対策を。などが寄せられている。そしてこの投稿だけに、約3.4万件以上のコメントとなった。中には、安倍総理の体を気遣うコメントもたくさん存在した。

炎上した問題の本質

こうしたコラボを行い個人の発信の自由という見解もあった。ただこれは、諸外国からみるとどう映るだろうか。発信者側は悪意があって投稿をしていないとしても、星野さんの呼びかけた目的にあっていない投稿を行ったことで、この動画はあくまで安倍総理の自宅自粛のメッセージを呼び掛けることが目的となってしまい、星野源さんの音楽はそのメッセージのために政治的に利用したとの印象を招いてしまったことが問題の本質だろう。(あくまでプライベートであれば、RTできるツイッターに投稿せずに、せめてRT機能がないInstagramにだけ投稿しておけばよかったのではないかとも感じる) また首相が自分の周辺だけで物事を決める、トップダウンの政治手法の可能性もあるだろう。

ではどのような内容だったら炎上を抑えることができたのか。

私がSNS担当秘書だったらこのように投稿する

(※あくまで自身の主観なのでご了承いただきたい)  

公共の場に発信するSNS担当者の事前チェックについて

✔撮影する相手は公共の場にふさわしい、動画のコンセプトにあった身だしなみかどうか✔写真をSNSにアップするときは他人が映り込んでいないかどうか確認(肖像権の問題に配慮)✔撮影に適した壁紙と部屋と撮影につかうインテリアをチェックする✔余計な反射する光や物音が入らないように注意する。✔極力一人での投稿は行わない秘書に添削をお願いする。(予備補足:星野源さんをコラボするならば所属事務所に念のため事前に申し入れする(今回事前の連絡はないとの旨)、総理が面識があり懇意にしている著名人なら別かもしれないが、私がSNS担当だったらコラボはしない。また誹謗中傷を跳ね返せない人は、公開アカウントでSNSをしないことをオススメしたい。)

【実際の投稿内容の提案】

まず、『自宅自粛をしてくださっている国民への感謝を動画』をテーマに撮影する。♯stayhomeや♯おうち時間のハッシュタグを動画わきに加える。#総理の週末 #私もSTAYHOME #総理のおうち時間 のハッシュタグでも構わない。・次に足を組んでいるところをカット上半身のみ撮影し、下からや横からは撮影しない。(臨場感を出す為に部屋着でも可)撮影者と対等な目線の位置でとる・一番シンプルな部屋で場所を変えずにカメラ位置固定し同じ椅子に座って上半身の動作を変えていく・一番重要なコンテンツは、どの絵図を切り取られても、週末でも「国民の命と生活を守るために奮闘している」「我がこととして考える・弱者の視点を忘れない」「少しでも国民の不安を和らげる」という点を心掛ける。それを心掛けるだけで、お茶を飲むシーンや愛犬と過ごすシーンを入れても行動が変わると思うし、週明けスケジュールの打ち合わせのオンライン会議の様子をいれる。

↓以下の写真のようなイメージ:首相官邸の公式FaceBookより

画像10

最後に首相自らの口で国民に向けて力強いメッセージを話す。

◆SNSに投稿する文章案はこちら:あえて英語にする『Message to those who are staying at home, and medical professionals working at the frontlines of this crisis』

動画原稿案(長くても 3 分強以内)

(※あくまで自身の主観なのでご了承いただきたい)

『“仕事にも行けない”“大切な人にも会えない”ただこうしたあなたの協力によって、誰かの命が確実に救われています。本当に、(一呼吸おいて)本当に、ありがとうございます。(頭を下げるシーン)そして、私たちが家にいることで助けられる命があるとともに、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながっています。コロナウイルスの収束には時間がかかるかもしれませんが、誰一人として国民をとり残さない、そんな強い思いをもって私たち政府も取り組みます。必ず乗り越えていけると思います。いま私たちは、こうしてSNSや電話を通じて、人と人とのつながりを感じることができます。毎日皆さんから学ぶことがあり、こうして私への多くのメッセージを届けてくれて感謝しています。どんなことでも、メッセージをお寄せください。国民の皆さんからのメッセージは現場に希望を持たせてくれ、行動する勇気を与えてくれています。一日でも早い国民の生活普及のために、一生に一度のこの時期を、速やかな対策を行い乗り越える、国民のみなさんの不安と恐怖を1日でも早く拭えるように努めていきます。私たちの全ての子どもたちに、より良い未来を残していく為にも、あと少しどうか力をかしてください。』

提案意図

おうち時間とは、くつろぐことだけの意味をもつとは限らないので、おうち時間で過ごす中には、自宅でも仕事をしなければ生きていけない国民がいること、本当は働きに出たいにも関わらず自宅に待機してくれている国民への感謝と敬意、そして不安を和らげる配慮を大事にする。正直選挙戦並みの切羽詰まった緊張感ある動画でも良い。絵コンテを添えたかったが破壊的に絵が上手ではないのでやめました・・・

その他案

✔国会議員や閣僚がそれぞれが手洗い・アルコール消毒やマスクの着用を行う様子の動画を、バトン形式で次の人へ次のへにループさせる。

✔国会議員や閣僚の自宅自粛の様子をループ

※国民への呼びかけプロモーションだけをみると、この内閣のイメージを払拭する必要があるだろう。超党派として行ってもいいかもしれない。あと、著名人の力をかりるのは賛成です。それは決して便乗ではなく、連携だ。発信力を持っている著名人の方にお願いして、党派を超えて国一丸となって乗り越えていく姿勢を見せる、国民にとってそれは今本当に必要な情報なのかどうかをつねに問いかけることを大事にする

今回の調査結果と考察

今回コロナ感染症が拡大している地域を含む15か国を対象に活用分析を行ってみるといくつかの工夫と共通点があった。

調査結果

①コロナが本格的に始まった2020年以降の投稿では各国の首相アカウントでは首相のプライベート写真動画の投稿はほぼ行っていない。②国民呼びかける際には、政府のアカウントを通じて目につく“外出しないで!”インフォグラフを作成し啓発を呼び掛けている。③緊急度が高いほど正面に向き合って首相自らが1:30ほどの動画内で力強く呼びかけている。④政府は現場で戦っている人々に感謝の気持ちを通じて現場を切り取った動画をアップして、今この瞬間にも戦ってくれている人たちに不安をやわらげ、感謝と敬意を発信している。⑤政治は、政治家の仕事のその先にいる国民のもの:敬意が伝わってくる絵図としてリプライや国民と直接やりとりするコミュニケーションが盛んだった。

(ちなみに補足だが、自宅で撮影をして国民に呼びかけをしている大統領は見当たらなかった。コロナに感染したイギリス大統領を除く)

ここで諸外国と比較した際に日本政府・政治家が情報発信する上での課題点を以下にまとめる。

課題点1:日本は、諸外国のリーダーと比較した際に、首相と国民とのコミュニケーション(対話)の機会の提供が比較的少ない・また伝達までに距離がある点

例えば米国の場合:直接的に国民に伝える発信手段として大統領自らがツイート➡国民に首相の考えに触れる機会が増えて、政府の状況が伝わりやすい。(また諸外国首相のアカウントではリプライはとても盛んだ)

日本の場合:秘書もしくは官邸スタッフが首相の様子やメッセージを代理投稿➡報道メディア・新聞媒体を通じて➡国民へ届けられる(タイムリーに首相の動きなどに触れる機会は非常に少ないことによって、総理や政府はいま何を考えているのか、本質の部分がマスメディアを通すことによって見えにくくなってしまっている可能性がある)

こうして国民の細部に伝わるまでに何度か情報の伝達手段を阻んでしまっているのが今の日本の情報伝達手段の状況だ。炎上や批判を生まないようにより慎重な姿勢を大切にしているのは日本らしいと感じるが、いま必要なのは、国民がより安心できる取り組みを行うこと。その積み重ねこそが政府への信頼につながっていくと考える。

課題点2:炎上後の対処や対策を行わずそのまま発信し続けている点

例えば今回のように国民の代弁する政治家が自分と国民とは違うというズレを自ら証明し、さらなる溝を国民との間に作ってしまった炎上を放置している。これでは国民と向き合うことを避けている印象付けになってしまう。国民の行動変容に効果的に繋げていきたいならなおさら、国民の意識を一つに導く必要があるだろうし、大事なのは、国民の納得感と安心感を生み出すバランスの取れた日々情報発信を行う姿勢であり、持続することで国民との間に信頼が生まれていくことを忘れてはいけない。

もし炎上してしまったら?・・・

①炎上したら、治るまではソーシャルメディアの活動を停止する

②弁明や謝罪、今後の対応策や発表は方針が決まってから早急に公式なコメントの第一報(お詫びなど)を入れる。

③対応方針を受けて、「継続的に問題に対応していく」といったコメントを第二報として出し、数日経過した段階で対応状況の開示を、沈静化したところで改めてお詫びと今後の改善案などを表明する。

炎上後に避けるべきこと

・ユーザーに直接反論したり、うそをついたり、違法性の有無に論点をすり替えることなどは×(不快と見なされ、企業自体の信頼性も損ねてしまうため)

・炎上内容が事実でないとき、反射的に謝罪しない、事実確認に時間がかかる場合も「調査中です」などと、一報しておくのも◎

・炎上した投稿の削除はなるべくしない

課題点3:政治の業界には国民の目線に落とし込みSNSを運用できるクリエイティブ人材が少ない点

現場のSNS担当者の声を今回調査できていないので本稿の限界ともいえるのだが、議員秘書を経験してきた自身として言えるのは、日本の政治家事務所には広報専門の秘書やSNS専門のスタッフはいない。そして国民の目線に落とし込むためには、国民の立場と状況を日ごろから意識して寄り添う創造性が必要だと感じる。これは政治の業界全体にいえることだが、若者自体の人材が乏しく、最新のSNSやクリエイティブな創造性をもって運用できる人材は現場には不足しているのが現状である。また人を雇えない事情がある議員もいるとおもう。そんな時は、文章だけでも経験者に添削してもらうなどして多視点を取り入れた発信をおこなうことをおすすめする。

日本の政府・政治家が情報発信する際に必要なもの

国民の目線に落とし込んだ政策と共に、国民の目線に落とし込んだ国民とコミュニケーション(対話)・日々オンラインでの接触機会をおこなう

国が国民との「コミュニケーション=対話」を試みる姿勢

政治家自身が“我がこととして考える“弱者の視点”

必要最低限のSNSやITの変化に対応する柔軟力と応用力

各国の大統領に真似を求めるというわけではなく、国民に対して、政治家として今一度何をお伝えすべきなのか、政治家というあなた方にしかできない国民への呼びかけと、その立場があることを今一度考えてほしい。

政策の内容や予防の呼びかけは、官公庁や首相官邸等のオフィシャルでも呼びかけることができるが、政治家は国民を守る言葉を話す権威ある立場、政治家は、行政よりも一歩踏み込み国民に寄り添う気持ちを伝えることができ、期待に応えることができるのだ。

SNSを情報発信手段として活用する様々なメリット

地方自治体との連携やネットワークを強化できる。今回の全国に対する緊急事態宣言を行う際に、地方自治体は急な対応に見舞われた。だからこそ総理自らが政府の状況を日々時系列ごとに発信していることで、たとえ急な宣言を発令したとしても地方自治体は事前に政府の考えを把握して対策をとることができる。そして政治に関心をもてない若年層へのアプローチする手段になり、SNSで政治家と若者の接触機会が増えることで、投票率向上につながる可能性を秘めている。オンライン発信を行うことで広報費用も削減できるだろう。密に国民とコミュニケーションを行うことで、結果的に国民一人、一人への安心感と納得感につながっていくのだ。

SNSを情報発信手段として活用する注意点

また同時にSNSを活用する問題や注意点を一応上げておく。SNSによる承認欲求は自分軸を見失わせてしまう点があることだ。SNSは非常に依存性が高く、いいねの数やフォロワー数が気になる気持ちが強迫観念となり、行動の一つ一つが他人軸となってしまう。こうした承認欲求にとらわれることで、目の前にある大切なことを見失い、手段を選ばなくなるとしたらそれは目的とは本末転倒になる。また、一度でもSNSを利用してアップするとアカウントデータの完全消去が不可能となり、オンライン・フットプリントの問題は避けて通れなくなる。最近では、悪意を持ったフェイクニュースの情報も多く、詐欺サイトへの誘導など悪質なケースも後を絶たない。万が一、マスコミや政府がSNS上での口コミを疑わず重視しすぎることは、SNS上での評価が一つのKPIとなり、世論を動かしてしまう危険性もある。発信者側だけれなく、受信者側も正しい情報かどうか信ぴょう性を判断できるように今後も国民一人、一人の情報リテラシーの向上が求められるだろう。

最後に

こうしたSNSが関係する問題が顕在化している中でも、SNSに頼らざるをえなくなるほど、現代においてSNSがもたらす影響力ははるかに増してきている。今回私自身も各国の首相のSNSを調査して目にして感じた、世界には、自分の暮らしている国のリーダー・大統領のスピーチやメッセージによって、救われる国民がいることを。国民は、その国のリーダーが国民へ呼びかける姿勢をみて、“あと少し、あと少し頑張ろう”ときっと思えるのだ。

改めて、今回の分析は決して自民党や政府を一方的に批判するつもりで書いたわけではない。いま緊急事態の中で、そうせざるおえない政府の現場の環境もあるだろう。政治家や役人の皆さまが国民のためにどれだけ自らの寿命を削り懸命に現場で懸命に昼夜問わずに戦ってくださっていることかはよく理解できる。だからこそ情報発信一つで、政府へのイメージが崩れてしまうことは非常に胸がいたいのだ。SNS上では信頼を築きファンを育てるには多大な労力と時間がかかるのに対して、炎上一つで崩れてしまったケースは多々ある。逆を言えば発信次第でイメージは改善できる。

国のリーダーとして国民を守るために的確な発信と創造力で国のリーダーシップをとり、国民を守る安心を与えるメッセージを真っ先に打ち出していくことで国民を想いを一つに導く、こうした国民とコミュニケーション(対話)をする姿勢を政治家の方々にはどうか忘れないでほしい。

論考の終わりに、かつての米国のリーダー・ケネディ大統領が残した言葉を本稿の最後に残したい。

『My fellow Americans: Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. ― My fellow citizens of the world: ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man. ( 米国民諸君、国が自分に何をしてくれるかを問うのではなく、自分が国に何ができるかを問いたまえ。世界中の市民諸君、米国が自分たちに何をしてくれるかを問うのではなく、人類の自由のためにともに何ができるかを問いたまえ)』

ケネディ大統領は、国のためへの呼びかけではなく、冷戦の時代、世界の破滅を阻止するためにアメリカ人だけでなく全世界の人間ひとりひとりに何ができるかを考えてほしいと訴えているのである 。 未知なる敵であるコロナは私たち人類に、ひとりひとりに何ができるかを今一度考えるチャンスだと問いかけているのかもしれない。

コロナウイルスの収束には時間がかかるかもしれません。だからこそ私たち自身も、一人が一人が当事者意識をもって一緒に考えていきませんか。

“ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country”国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のためになにができるかを。

原文記事:【論考】いま政治家の情報発信に求められるものとは:諸外国リーダーのSNS分析から見えた日本の課題“私が総理のSNS担当だったら”

https://note.com/yoshiminakamura/n/nc5a9bcd11ad0#nU0FJ

中村佳美さんプロフィール

慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程在籍・研究者。国会議員秘書を経て、若者目線でのネット選挙および政治家・自治体のSNS利活用について専門に研究。ネット選挙戦略や政治家のSNS発信のサポートを日々行っている。1992年高知県生まれ。

Twitter:https://twitter.com/_yoshipan_
分析記事:https://note.com/yoshiminakamura

政治コラムカテゴリの最新記事