SNSアナリストに聞く!SNSと政治の関係性

インタビュー

アメリカ大統領選2020について

ーー2020年のアメリカ大統領選ではトランプ氏、バイデン氏ともにSNS発信にかなり力を入れていたかと思います。中村さんも大統領選には少し注目されていたとのことですが、両陣営の発信方法の特徴は何かありましたか?

Instagramの投稿を分析すると、バイデン氏のコンテンツの特徴としては、投稿の型に偏りが見られずコンテンツのバランスがとても良いです。通常時の主張型のメッセージには、今回どうして立候補し、誰のための計画なのかバイデン氏自身の政策をしっかりと伝える姿勢が見られる画像と投稿が多かったですね。活動報告とアメリカドリームを連想させる活動報告型と主張型の投稿が多く、ネガティブキャンペーンはあまり見当たりません。

一方で、トランプ氏の場合は、Twitterと同様に短文のメッセージで発信されており、特にバイデン氏に対する攻撃的なメッセージ性を含む主張が多く、支持者の結束を強めていました。1日多くても約3ポストであり、毎日更新。投稿内容は主に、ネガティブキャンペーンに当たるものがほとんどです。Instagramの他にも、それぞれが開発した陣営アプリ、公式HP、セグメントされたメルマガ発信において投票の呼びかけをオープンにしていましたね。

ーー両者の活用法が対照的ですね。日本の政治家と比較してもだいぶ違うことが分かります。

欧米の選挙は、政治家もネットユーザーも政策議論が活発なところはありますね。欧米の政治家だと、どちらかというと主張型の投稿が多いです。一方で、日本の政治家は、報告型の発信が多く見られます。あくまで、〇〇しましたという発信手法。コミュニケーションの一環として、政策議論をネット上で行う人たちって、大体決まった政治家が目立ちます。大半の政治家は、意見のぶつかることから炎上に発展することを極力避けようとしますよね。

ーー先日トランプ大統領のSNSが凍結されたことが大きくニュースになりました。賛否両論ありますが、中村さんは今回の事態をどう受け止めていますか?

「表現の自由」の弾圧や言論統制に繋がることを懸念する意見や陰謀論ではなど様々な意見がある中で、この問いは難しいです。結局のところは、Twitter社のプラットフォームであり、彼らが所有しています。Twitterは政府機関ではないため、プラットフォームに必要なコンテンツを決定できますし、サービスに関しては、規約違反するアカウントを削除する権利があります。

前提として、我々ユーザーはTwitter社の規約に同意した上で、利用しています。その規約を脅かすアカウントへの規制は、最終的には、彼ら(Twitter社)の選択です。しかし、同時にこれはSNSプラットフォームの脅威を表しています。Twitter社によると、私たちの公益の枠組みは、選挙で選ばれた役人や世界の指導者から直接話を聞くことができるようにするために存在しています。これは、国民が公開の場で権力の責任を問う権利を持つという原則の上に成り立っているということでしょう。

ーー規制の線引きは難しいですね。SNSのあり方自体も大きく変化しているように感じます。

これまでトランプ氏にとって、Twitterは、支持基盤の保守層に直接語りかける有力なツールでした。しかし、今回で、運営企業との間の亀裂がより鮮明になったことで、自身のプラットフォームを自ら立ち上げる可能性すらあります。そして、保守派ユーザーはTwitterからどんどん離脱していく人たちは今後増す可能性は多いにあるでしょう。

今回の米大統領選は、結果としてこれまであった分断をいっそう深めることになったと感じています。今後、ソーシャルメディア企業側の主観による言論統制が幅広く行われる可能性があることに、懸念は確実に増えていくでしょうし、それは単に規制を強化すればよいというものではなく、同時に、表現の自由とのバランスを十分に考える必要性がありますよね。

中村よしみさんプロフィール

中村佳美さん
政治メディア研究者・アナリスト/慶應義塾大学院政策・メディア研究科修士課程在籍。「SNSで政治家をもっと身近に」をモットーに、政治家のソーシャルメディア利活用、SNSと政治の関係性について、多数の政治家にインタビューしながら混合研究に取り組む。また、ネット選挙参謀や現場議員のSNS運用サポートを行う。高知県アンバサダーとしても活動。

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