性教育のこれから-現状と課題から見るこれからの性教育

政治コラム

「性教育」

あなたはどんな授業を受けた記憶があるでしょうか?

筆者は私立の高校生で、保健体育の授業で受けたことがあるのですが、男子校ということもあり生徒が騒ぎそこに教員が叱って始まったことからお通夜ムードの中で行われてたという印象が強いです。

性に関する話題がタブー視され、真剣に話すと「なんだこの人」というような目線で見られることも多いですが、本当にそれはタブーとすべき話題なのでしょうか。

今回は東京都の性教育に関する現状を見ながら、性に関する知見を深めていければと思います。

性教育の現状

今回は東京都教育委員会が平成31年に改定した「性教育の手引」を参考にしながら見ていきたいと思います。

そもそも性教育って何?

学校における性教育は、「性教育の手引」において以下のように書かれています。

近年、社会環境の変化や情報化社会の進展など、児童・生徒を取り巻く環境が変化す る中、学校においては性情報の氾濫、未成年者の性感染症や人工妊娠中絶の未然防止、 性自認・性的指向等への正しい理解など、様々な課題に対し、適切に対応する必要があ ります。学校における性教育は、児童・生徒の人格の完成を目指す「人間教育」の一環として、「生命の尊重」、「人格の尊重」、「人権の尊重」などの根底を貫く人間尊重の精神に基づいて行われます。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2019/files/release20190328_02/01.pdf

性教育と言うとやはり性行為に関連したことについて教えるものであると考える人も多いですが、東京都においては

『学校における性教育は、児童・生徒の人格の完成を目指す「人間教育」の一環として、「生命の尊重」、「人格の尊重」、「人権の尊重」などの根底を貫く人間尊重の精神に基づいて行われます。 』

としており、 単に性行為に関するリスクや避妊法を教えているというわけではありません。

しかし現実には、性にまつわる現象や問題は、生殖周辺に限らない。性指向や性自認などの精神面、性的マイノリティー差別やアウティングなどの社会面、虐待・犯罪に関わる人権・法律面など多岐に渡る。が、日本の一般的な性教育授業では、その多くについて触れていない。今年改定が発表された東京都の「性教育の手引き」のように、性同一性や性犯罪について取り上げた指針もあるが、日本全体で見ればとても先進的な一例だ。

https://president.jp/articles/-/29133?page=2

しかし、上記記事の通り東京都は日本の中でも性教育に関して言えば非常に先進的であり、日本全体としては 単に「性行為に関するリスクや避妊法を教えるものである」との認識が強いのかもしれません。

もちろん、 性行為に関するリスクや避妊法を教えることも重要ではありますが、 この認識の誤りが、性教育に対する批判を強めている要因なのかもしれません。

実際どんなことしてるの?

『日本全体としては 単に「性行為に関するリスクや避妊法を教えるものである」との認識が強いのかもしれません。 』ということを先述させていただいたのですが、では実際にどのようなことをしているのでしょうか。

性教育の手引」を参考に学習内容を見ていきたいと思います。

小学校

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2019/files/release20190328_02/02.pdf

中学校

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2019/files/release20190328_02/03.pdf

高校

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2019/files/release20190328_02/04.pdf

データから見る日本の現状

このように、東京都でも様々な性教育に関する取り組みを学校で行っているようです。

しかし、データ的に見ればまだまだ性教育の拡充が必要ともいわれます。

ここではそんなデータについてみていこうと思います。

人工妊娠中絶件数

厚生労働省の「平成29年度衛生行政報告例の概況」 によると、平成29年度の20歳未満の人工妊娠中絶件数は14128件であり、 これは1日当たり約38件の人工妊娠中絶が行われているということになります。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/17/dl/gaikyo.pdf

もちろんこの数値は年々減少してはいますが、この件数をより減らしていくことは理想としてこれからも目指していくべきだろうと思います。

性知識

それでは、性教育による効果が存在し、実際に生徒は、知識の習得ができているのでしょうか?

NPO法人ピルコンの実施した調査(高校生の性知識・性意識・性の悩みに関する調査 / 調査対象:関東圏全日制高校生1年生~3年生男女 4,016名(11校))によると、

高校生の性知識:正答率の平均は3割

であるという結果が出ており、学校における性教育の効果に疑問を投げかける意見もあります。

以下に一部の回答例を出します。

(1)排卵はいつも月経中に起こる(×)
 正答率:18%
 わからない:65%
(5)低用量ピルは女性が正しく服用することでほぼ確実に避妊できる(○)
 正答率:17%
 わからない:62%
(6)低用量ピルには月経痛や月経不順の改善の効果がある(○)
 正答率:19%
 わからない:71%
(7)避妊に失敗した時、72時間以内に使える緊急避妊薬がある(○)
 正答率:21%
 わからない:68%
(10)性感染症にかかっていても必ずしも症状は出ない(○)
 正答率:23%
 わからない:51%

NPO法人ピルコン | 高校生の性知識・性意識・性の悩みに 関する調査 より
https://pilcon.org/wp-content/uploads/2015/04/6a90f1cd42dd5ae984e065c5fa6675ca-2.pdf

このようなデータから、性教育が十分に行われていないということと、生徒自体があまり熱心ではないのではないかと考えられます。

それには教育内容だけではなく、「大学受験にどうせ使えないから」という、社会に出てから必要となるが、教育課程においてあまり重視されていないという評価軸による弊害も出ているのではないかと感じます。

性教育の拡充はもちろんそうですが、改めて教育の在り方も考えなければならないのかもしれません。

番外編:学習指導要領

番外編的に、文部科学省が出している学習指導要領についても見ていきたいと思います。

(7)内容の(2)のアの(イ)については,妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から,受精・妊娠を取り扱うものとし,妊娠の経過は取り扱わないものとする。また,身体の機能の成熟とともに,性衝動が生じたり,異性への関心が高まったりすることなどから,異性の尊重,情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うものとする。

文部科学省 | 【保健体育編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 よりhttps://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_008.pdf

文部科学省の指導要領では、上記のような妊娠の過程について中学校時点では取り扱わないとする、いわゆる「はどめ規定」があります。

しかし、人工妊娠中絶件数を見ると、中高生でもその数は多く、より早期にこの教育を行う必要があるという意見もあります。

これに関して「性に対して奔放になってしまう」というような批判がありますが、さいごにの部分で反論意見も載せたいと思います。

さいごに

このように、まだまだデータも見ると性教育には問題が多く残っており、これからも考え続け、改善していく必要があるのだろうと思います。

たとえばHUFFPOSTの取材に対して性教育YouTuberであるシオリーヌさんはこのように答えています。

日本の現在の性教育は「遅れに遅れている」と、シオリーヌさんは警鐘を鳴らす。海外と比べると、日本の性教育はどの程度遅れているのか?
性教育には、国際基準のマニュアルがあります。ユニセフやWHOが協力し、ユネスコによって発行されている『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』というガイドラインです。
それを見ると、国際的には性教育って「遅くても5歳までに始めてください」と書いてあるんです。「遅くても」ですよ?
加えて、マニュアルには単発的ではなく継続的に・段階的に性教育を行っていく必要があると書かれていて、各年齢に応じて、理解度の目標が記載されているんです。(中略)
日本だと、“具体的な性教育を幼い頃から始めちゃうと、好奇心で性行為をする子供達が増えるんじゃないか”という声が上がるんですけど、それに対する答えもガイドラインにはあります。
ガイドラインに沿った性教育を実施した国を継続的に調査したところ、性教育をした国の中で、初体験の年齢が早まった国は実は1つもなかったんですよ。
1カ国だけ“変わらない”という国がありましたけど。それ以外の国は、初体験の年齢が遅れています。

“性教育”をYouTubeで伝えるシオリーヌさん「性について“話せない”というタブー感を変えていきたい」 | HUFFPOST https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d1c3d22e4b082e55371d8ca

このように、まだまだ国際的に見ると遅れているといわれる日本の性教育。

東京都は他の自治体と比べてレベルが高いと言われていますが、それでもまだまだだと言われることが多いこの現状をどのように変えていくべきなのでしょうか。

多くの争点が残る性教育の問題ですが、これからも自分事として考えていく必要があります。

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