消えない火種

政治コラム

実におよそ6年にも渡る戦いに、ようやく終わりが見えてきました。

シリアで活動する『シリア民主軍(SDF)』は3月1日、過激派テロ組織『IS(イスラム国)』の最後の拠点である、シリア東部の村バグズへの攻撃を開始したと発表しました。 ISは2013年4月に本格的に行動を始め、イラク及びシリアに攻勢をかけ、イラク政府軍を撃退し、各地を占領下に置いていき、一時はイラクの首都バグダッドさえ脅かす勢いでした。

シリアとイラクの今

しかし、米国やロシア、トルコなどの国々やそれらから支援を受けた組織による攻勢によって、シリアとイラクにまたがっていた占領地域は徐々に解放されていきました。

このIS掃討で注目を集めたのが、クルド人です。 

クルド人はトルコ、シリア、イラクにまたがる地域に暮らす人々で、『国を持たない最大の民族』としばしば呼ばれることもあります。

彼らは国こそ持っていないものの、イラクやシリアでは一定の自治権と独自の戦力を持っており、この戦力がIS掃討で大きな役割を果たしました。

2014年6月にISによって占領されたイラク北部の都市モスルは、17年7月にイラク軍やクルド人部隊などによって奪還されました。

奪還から1年以上が経過した現在、モスルでは美容院や美容整形外科が次々と営業を再開しているといいます。 また、シリアでも冒頭に述べたようにISはほぼ駆逐されつつあります。

消えない火種

しかし、シリアでは未だに内戦は終結しておらず、新たな火種も抱えています。

それは、クルド人問題です。

対ISで存在感を高めたクルド人ですが、これに反発しているのが長年に渡り、国内にクルド人問題を抱えるトルコです。トルコは国境を接しているシリアやイラク国内でクルド人が勢力を拡大すると、自国内のクルド人による自治や独立を求める反トルコ運動の活発化を懸念し、軍をシリアに越境させクルド人勢力を攻撃しています。 一方クルド人勢力もシリアのアサド政権側と連携をするようになり、対抗姿勢を打ち出しています。

おわりに

シリア内戦は、シリア国内外の様々な勢力が連携と敵対を繰り返す構図になっておりISという共通の敵が居なくなった後、アサド政権、クルド人、反アサド政権派、トルコ、そしてアメリカやロシア、中東諸国が主なアクターですが、中でもクルド人とトルコの動きが大きな鍵を握るものと考えられます。

場合によっては混乱が今以上に深まる事もあり得ます。そうなると、再びISが息を吹き返す、または新たなテロ組織が生まれることもあるでしょう。

私たちに何ができるか? 

この問いに答えるのは容易なことではありません。しかし、少なくとも関心を持ち続けることは無意味なことではないと思います。

【今日の言葉】

シリア内戦:2011年のアラブの春の影響で発生した、親子2代に渡り独裁を続けてきたアサド政権に対する退陣運動に端を発する内戦。 アメリカやロシアなどの介入や過激派の流入などにより、複雑化・長期化。

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