SNSと政治の関係性を科学的に説明する
ーーそれでは実際の研究内容について質問させてください!まず日本ではどのプラットフォームが活用されているのでしょうか?
日本ではTwitterやFacebookですかね。Instagramなどはまだ普及していない印象があります。やはりTwitterは情報伝達の即時性がある上、拡散力も高いため、最近では多くの政治家が利用しています。選挙があるときを中心に、YouTubeの発信もチェックしますが、与党議員の間ではまだ浸透していないですね。
以下は、2020年12月時点における国会議員のSNS利用の調査結果です。国会議員全体の Twitter、Facebook、Instagram、YouTube のアカ ウント所持数を調査した結果になります。国会議員全体で最も利用の多かったメディアは、Facebook であり、 100%に近い議員(658 人)が所持しています。その他の媒体では、Twitter は 561 人、Instagram 327 人、YouTube 529 人ですね。各メディアの利用率は、Facebook (92.7%), Twitter (79.0%), YouTube (74.5%), Instagram (46.1%)となっています。
また、国会議員インターネットメディア利用者数・利用率を、2017 年と 2020 年で比較してみると以下の図になりますね。まず、男女ともに、YouTube と Instagram の利用率が上昇しています。 これは、衆参両院においても、同じ傾向です。
※12017年度 国会議員インターネットメディア利用率データ出典先:(宮澤孟彰. SNS がもたらす政治コミュニケーションの変容可能性ー議員インタビュー調査からー 東京大学大学院 情報学環・学際情報学府, 2017. )
※2 2020年度 国会議員インターネットメディア利用率データ出典先:(中村佳美.なぜ政治家はSNSを使わざるを得ないのか—SNS活用動機の分析—慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科,2020. )
ーー2017年あたりではInstagramの利用率が10%にも達していないんですね。
他にも興味深いデータがあります。地域別に見ると、衆議院では利用の多い順に
東京 > 東海 > 近畿 > 北陸信越 > 北海道 > 南関東 > 中国 > 四国 > 東北 > 九州 > 北関東
となっており、参議院の利用の多い順では
北海道 > 東京 = 四国 > 東海 = 近畿 > 南関東 > 全国比例 > 東北 > 北陸信越 >北関東 > 九州 > 中国
となっています。
またこの調査の際には、大都市を抱える地域(東京、東海、近畿)の利用度が高かったため、人口 600 万人以上の都道府県 (東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県)、人口 200 万人以上の都道府県(兵庫県、 北海道、福岡県、静岡県、茨城県、広島県、京都府、宮城県、新潟県、長野県、岐阜県)、それ以外 の人口 200 万人未満の都道府県、3 つのグループに分けたところ、大都市圏の議員のほうがインター ネットメディアの利用に積極的であることが読み取れました。
さらに人口密度が 400 人/km2以上の都道 府県(東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、愛知県、千葉県、福岡県、兵庫県、沖縄県、京都府、香川県、茨城県、静岡県)と、それ以外の人口密度 400 人/km2未満のグループに分けた場合でも、人口密集地域の議員のほうがアカウント所有率が高いことが示されました。
ーー地域や利用媒体を見るだけでも様々ことが読み取れます。SNS媒体ごとに何か特徴などはありましたか?
メディア別に見てみると、例えば国会議員 Twitter 利用者データにおいては、自民党議員が支持を集めています。また、多くのフォロワーを持つ議員はほとんど 50 代以上であることが分かりました。
各政党別の国会議員数に対する Twitter 利用者の割合(%)を縦軸に、そのアカウント開設日を横軸 にとった累計グラフを図 に示しています。日本共産党は 2016 年の時点で全議員がアカウントの開設を 完了していますね。
国会議員 Twitter 利用者の各政党別の投稿頻度が下記の図です。Twitterを2 週間放置する議員が自民党議員には約4割いる一方で、日本共産党、国民民主党は所属議員が非常に活発にツイートしていることがわかります。日本共産党は最もツイート数が少ない人でも 803ツイートですが、自由民主党は 500ツイート以下の議員が100人(36%)です。
ーー政党ごとでも活用の仕方や支持層が異なっているんですね。最近はYouTubeチャンネルを持つ政治家の方も多いと思いますが、利用状況はどうなっているのでしょうか?
国会議員 Youtube利用者データにおいては、現状以下の図の結果になっています。
YouTubeの活用については、国民民主党と日本維新の議員の約 80%は、1 年以内にビデオをアップロードしている一方、自由民主党の議員は 40%程度ですね。そして、1 期目の議員、全国比例の参議院議員は、ビデオの更新頻度が高いが、70 代を超えるとビデオの更新が滞りがちになる。
さらに細かく見るとviewsでは、30 代の議員のビデオがよく見られており、30 代の議員のチャンネル登録者数が多いですが、視聴数・チャンネル登録者数トップ 20 に入る議員は、40 代以上が占めています。また公明党議員のビデオはどれもよく視聴されている一方、自由民主党議員のビデオは視聴数 100 未満のビデオが結構あります。そして、Twitter と同様、YouTube も都市部の議員のビデオがよく見られる傾向がうかがえました。
こうした定量調査の大きな共通点として、国会議員が利用するメディアは、在職年数や所属政党などの個々の立場・状況によって大きく変化し、目的によって使い分けられている傾向が見られたことです。つまり、議員の個々の立場によってメディアの利用動機は、年々変化している可能性が高いと考えられますね。
ーープラットフォームがたくさんある分、更新や運営を滞りなく続けていくだけで一苦労ですね、、さらにアップデートや新機能リリースも早いですが、政治家の方は積極的に対応されているのでしょうか?
先程の図にあった通り、所属政党によって活用状況もメディアの使い分けも全く異なりますね。それは、メディア媒体と議員の立場との相性もあると考えられます。そして、国会議員のインターネットメディアアカウント所有率は、年齢とともに下がっていく調査結果が出ています(30 代: 87.5%; 40 代: 84.5%; 50 代: 77.1%; 60 代: 67.7%; 70 代: 54.9%)とりわけ Instagram は、高齢議員には浸透していない状況です。
このような結果からも、新機能への対応については、若手議員や野党が積極的に活用していますね。最近では、InstagramのリールやTwitterのフリートなどがリリースされたかと思いますが、与党では今井絵理子さんがかなり早い段階から活用されており、総裁選の際にもメディアに取り上げられていました。
次ページ:SNSは若者の政治無関心を克服できるのか?
コメント