近年SNS上の政治活動をよく見かけるようになり、さらに新型コロナウイルスの影響により政治活動自体が制限されている今、SNSは有権者にとっても、政治家にとっても重要なツールになっています。SNSで政治家をフォローしている方も多いのではないでしょうか?
そんな中、今回学生団体ivoteは「SNSと政治の関係性」について研究されている慶應義塾大学院生の中村よしみさんにお話を伺うことになり、中村さんご自身の研究内容や、日本政治家のSNS活用、さらにはその若者への影響など様々なことをインタビューさせていただきました!
最初は自分も政治に無関心だった
ーーまずは簡単に自己紹介をお願いします!
はじめまして、中村よしみと申します。現在慶應義塾大学院の政策・メディア研究科修士課程に所属しており、日本における政治家とSNSの関係性を研究しています。これまでの活動経歴としましては、大学院の研究の傍で、国会議員の秘書やSNS選挙参謀として現場のサポートもさせていただき、学術的な知見と現場の知見と融合させながら研究に努めています。
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ーーSNSと政治の関係性、昔からこの分野にはご関心があったのでしょうか?
実は最初は政治に全く興味を持てずにいました。国会中継などみてもよく分からないというのが本音で、20代前半くらいまでは政治に関心がなかったです。知識面でも一般的な公民レベルを知っているくらいで、それがなぜ大事なのかはあまり考えてきませんでした。
正直、大学院入学当初の研究テーマは、「地域×SNS」だったんですよ。元々、故郷高知県のPR活動を行ってきた背景から、高知県をより魅力的に伝えるためにSNSを活用したシティプロモーションを研究することに重きを置いていました。しかしながら、故郷の未来を朧げに感じ始めたある時、もしかしてこの地域を動かしているのは、政治なのではないかと感じ始めました。より地域の未来を創造するためには、今まで知ろうともしなかった、政治の現場をこの目で見る経験はとても大切だと考え、慶應義塾のOBである国会議員の下で秘書として経験を積ませていただきました。
そんな中、「政治×SNS」研究へのきっかけとなる転機が訪れたのは2018年ごろ。政治に足を踏み入れて一年後当たりでした。私がSNSをある程度使いこなせていたという背景から、突然「政治家のSNS発信を手伝ってくれない?」というお誘いがありました。戸惑いもありましたが、SNS発信スタッフとして関わらせていただくことになり、初めて選挙という現場を目にすることに。これは2019年の地方統一選挙になります。
これをきっかけに政治家の情報発信の重要性に、気付かされました。特にSNSや情報発信が今よりは、積極的に活用されていなかったことを目の当たりにし、「政治家のSNS発信ってすごく大事じゃん!もっと積極的に活用した方がいいんじゃないの?」と率直に感じましたね。これを機に、現場の知と学術の知を融合した「政治×SNS」の研究を切り口に、若手研究者として活動の場を広げるようになります。
ーー実際に選挙参謀として参加することで政治家への印象などは変わりましたか?
大きく変わりました。やはりこれまでは政治は難しいとか、また政治家へのイメージも「信用できない」とか、「一体何をしているんだ?」といったようにネガティブな印象が大半を占めてています。しかしメディアから得る情報には偏見なども含まれていますし、時には切り取りのような印象操作さえあります。実際に現場で働くことで、政治家の志や熱意を感じることができましたし、また現場を知ったことで、マスメディアから流れる世論のイメージに囚われていた自分に気づき、世間の政治家のイメージに憤りを感じるようになりました。どうして政治って堅苦しいのか?政治家が信用できないという偏見はなぜ生まれるのか?国民とのギャップに違和感というギャップですね。
ーー多くの有権者は政治をネガティブに捉えがちですね。
そしてこれは現場の課題としても認識されており、発言をするたびにメディアに切り取られバイアスをかけられてしまう。政治家の方にとっても解決策を模索している状況だったのです。そのような背景から私は「政治家がより、メディア活用を主体的に行い、生の情報を直接ユーザーに提供する。そうすれば、少しでも課題を解決につながるのでは?」と自ら提案してみることにしました。
ーーかつては政治無関心だった中村さんも、ついに政治家へ提案することになったんですね!その反応はどうだったのでしょうか?
フィードバックとしては「SNSって票に結びつくのか?」「効果があるのか分からないのに、お金や時間も割くのはリスキーじゃないか?」といった懐疑的、否定的な意見が多かったですね。もちろん、政治家の仕事は、ネットの発信ではないので、活用することに意味を見出せないのは確かでした。
また、今でこそSNS発信に積極的な方も多いですが、当時は2017〜2018年頃でSNS活用が今よりも染み付いているわけではありませんでした。ただこの課題を放置してしまうと、このままメディアの書きたいように書かれてしまうし、この他にも、SNSを利用したものはいいものの政治家における利用マニュアルは一般的にはないので、政治家が投稿した内容に国民とのズレが生じて炎上を招くケースも多発し、政治家がSNS との付き合い方に困惑している現状もありました。
ーーなるほど、今でこそ当たり前のように感じますが、当時は消極的な政治家が多かったとは意外です。
ただ何とか現場の困惑状況を打破したい思いがあったんです。SNSで情報を単に発信してほしいのではなく、あくまで国民とのコミュニケーションを取るツールとして活用する重要さを感じて欲しかったからです。何か動機がなければ、政治家の先生方も心が動いてくれないなあと考えを膨らませていたところ、とある先生から「ネットを通じて情報発信することが政治家にとってなぜ重要なのか、そこに確かなエビデンスがあれば政治家の意識が変わるんじゃないか」というコメントをいただきハッと気付かされましたね。まずは、なぜ重要なのか、しっかりエビデンスを示すことで意識が変わるのではないかと思い、現在の研究に本腰を入れるようになりました。
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