こんにちは、ivoteOGの鈴木満理です。
2019年1月に入会して以降、ちょうど1年間活動させていただき、先日ivoteを卒業しました。今日はivoteでの活動を振り返ります。記事の前半はivoteの団体について、後半は大学生活で考えたことについて書いてあります。
ivoteってこんな団体
私がivoteに入ったきっかけは、卒業論文のテーマである主権者教育に携わりたいと考えたことでした。主権者教育を実施している団体は多数ありますが、ivoteを選んだ理由は副代表の別木さんをはじめ、ivoteのメンバーの主権者教育にかける思いや熱量を最も感じることができたからです。
しかし、もともとテニスサークルで大学生活を謳歌していたこともあり(?)、学生団体や政治などのキーワードから連想される団体に馴染めるか不安がありました。実際にivoteに入ってからも政治の話にはついていけていない部分があったことは事実です。
ただ、ivoteに馴染めなかったといえば、そうではなかったと思います。わからないことをその都度説明をしてもらえたのは勿論のこと、そもそも社会や国に多少の関心がある人の集まりであって、メンバーの関心事はそれぞれ違っていることが前提だったからではないでしょうか。政治、教育、情報発信…
メンバーはそれぞれに関心事がありながら、
社会や国について思考する人が集まっている
と感じました。
加えて、ivoteのメンバーには行動力・実行力があり、関心事を自分事にしていく環境があります。例えば、私は主権者教育に関心があり、模擬選挙や選挙啓発の活動を通して、主権者教育を他人事から徐々に自分事として捉えることができました。
ivoteのメンバーには受動的に活動するというよりは寧ろ、ivoteを活用して何ができるかを考えることが求められていると思います。
理想を並べるのは簡単ですが、理想を実現することは難しく、ivoteのメンバーの実行力には脱帽することが多くありました。「学生だから」を言い訳にするどころか、強みにしていく。学生時代だからこその感性や感覚を持ちながら社会に対して働きかけることができる団体ではないでしょうか。
今までの活動の中心
・毎週日曜日の会議
・模擬選挙
・ivote media
・選挙前のイベント
詳しくはコチラをご覧ください。
主権者教育の現状
ivoteの主力活動の一つに「主権者教育」があります。私自身、ivoteで活動した1年で15回ほど(月に1回ペース)主権者教育の授業に携わりました。これらの授業を通して、気づいたことを卒業論文にまとめています。以下では研究結果を抜粋しながら、主権者教育の現状について考えていこうと思います。
まずは、主権者教育とは何か。総務省および文部科学省による定義によると、
総務省:
国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと[1]
文部科学省:
主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を育むこと[2]
[1] 総務省「主権者教育の推進に関する有識者会議とりまとめ」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000474648.pdf)(最終閲覧日2020/03/15)
[2] 文部科学省「主権者教育の推進プロジェクト」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/06/14/1372377_01_1.pdf) (最終閲覧日 2020/03/15)
としています。 しかし、ivoteに入ってわかったことの一つは「模擬選挙の授業がやたら多い」ということでした。
実際に実施報告を見てみると、主権者教育の内容は選挙について学習した学校の割合が高いことがわかります[1]。この実情に対して、主権者教育が有権者教育に矮小化しているのではないかとの指摘もあります[2]。
[1] 文部科学省「主権者教育実施状況調査について」
(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/06/14/1372377_02_1.pdf) (最終閲覧日 2020/03/15)
[2] 竹内俊子「『政治教育」と主権者教育―『一八歳選挙権』の制度化を契機として―」『大島寛・今石正人・川内劦・池田克俊・植田博・竹内俊子・渡邉直行教授退職記念号 _法学部創設四〇周年記念号』、二〇一七年、五六二頁、東野充成、大田真彦「ノルウェーの教育課程におけるシティズンシップ教育」、『九州工業大学教養教育院紀要』二号、二〇一八年、八〇頁 _など。
更に、実施報告の多い模擬選挙の授業について、五つの視点から課題を考えていきました。以下の課題を皆さんも是非考えてみてください。
学校区分「小中高での学習内容体系化」
小学校・中学校・高校の実施件数を比較すると、有権者になる生徒を抱える高校が最も多い。ただし、主権者であることに年齢は関係がなく、小さい頃からの積み重ねが重要だ。しかし、現状では小中高での学習内容が体系化されていないことが課題だ。
授業担当者「授業担当者間の連携」
多忙な教員のうち誰が主権者教育を担当するのか。教員と選挙管理員会や外部団体との連携が課題だ。また、担当教員以外が主権者教育に関心を示さないことも多い。誰が主権者教育を担っていくのか。社会科教員が担当すれば良いものなのか。
実施科目「社会科 or 総合の時間/課外活動」
総合の学習の時間や特別活動の時間での実施割合が多い。実施科目のせいか模擬選挙の授業はイベント化し、学校生活との繋がりを持たせることが難しい。しかし、前後の授業と繋がりを持ちやすい科目内(社会科など)で時間を割くことも授業数の関係上困難である。
内容・テーマ「政治的中立性の解釈」
架空の選挙を題材にした模擬選挙の実施割合が高い。教育基本法に規定されている「政治的中立性」を担保する必要があり、授業で実際の政治を扱うことには課題も多い。しかし、架空の選挙で学べることには限界があるのではないか。
事前事後授業の有無「時間数確保」
事前事後授業による学習が模擬選挙での学習をより深める。しかし、調査によれば主権者教育に割いた時間は年間2−4時間と回答した学校の割合が最も多い。他国のシティズンシップ教育や政治教育の時間数と比較しても、年間2−4時間は少なく、教育目的に対して十分とは言えないだろう。
“そもそも、公教育で何を教えていくべき?”
グローバル化や新自由主義の台頭は個人と国家の関係性を揺らがせているとも言えます。血縁、社縁、地縁といった従来のコミュニティが存在感を弱める一方で、SNSの普及などが自分の好きなコミュニティを選択することを可能にしています。コミュニティの選択性が高まった現代、何が人々をつなぐのか?その答えを市民性に求める考え方があります。市民性という新たな概念がコミュニティ内で共有できるという考え方です。この仮説が真であれば、公教育でも市民性について教えていく必要があるでしょう。市民性を育む教育には何が必要か?有権者教育だけで十分か?という問いは今後の公教育において議論に値するのではないでしょうか。
他のメンバーが主権者教育について書いた記事も是非読んで見てください。
学生生活のすヽめ
「自分のフィールドを持て」これは私の指導教授の言葉です。実際に私は学生団体ivoteと出会い、自分なりに主権者教育と向き合ってきました。大学の講義や文献だけでは細かい現状などは計り知ることができません。自分のフィールドを持つことによって、知識と現実を行き来する感覚が身につきました。
更に、行動すればするほど同じ課題意識を共有できる人に出会うことができ、課題へのアプローチは多様であることにも気づくことができました。学生生活は自由な時間が多いです。生活のちょっとした関心を深掘りしてみるのも良いかもしれません。社
会にはたくさんのフィールドがありますが、学生団体ivoteが一人でも多くの学生のフィールドとして選ばれれば嬉しいです。
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