東京から電車で約30分JR下総中山駅南口か ら少し歩いたところに あるが控えめで、注意していなければ気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない、和菓子「いち月」。
その主人、岩城和夫さん(56)を訪ねた。
「もともとは、親の代から和菓子を作っていたんですが、その跡を継ぐ、という意識が大きかったですね。
それに僕自身が食べ ることが好きだったってこともありますけどね(笑)。
いずれにしても、和菓子の世界に入ってみて、自分の中で奥が見えなかったら辞めようかな、って考えでした。」
自分自身が和菓子の道に進んだ理由にについて岩城さんは そのように語る 。
当時バブルは既に弾けていたものの、学生の身にはあまり実感がなくまた、コンビニがそこまで普及していなかったこともあって、町の商店街や専門店が多く生き残っている時代だったことも、家業を継ぐ大きな理由の1つになったという。
修行を終え自分の店に戻ってきて以来ずっとこの地で商店街の移り変わり見守ってきたが、その印象を尋ねると、
「ここの商店街はね~、いい意味でも悪い意味でも時代に乗れなかった分、近隣の町と比べて、流行り廃りがない感じですね。(笑) 他の町が商店街をつぶしてビルとか建てていても、ここは持ちこたえている感じかな。ただ、商店の高齢化は進んでいますね。」
そんな風に笑みを浮かべながら語ってくれた。
だが、現在和菓子の市場は特に都市部では、”店舗飽和”状態にあり、業界としても決して楽な状態ではないことは確かとのことだ。
しかし、そんな状況にあってもあまり大変だ、と思ったことはないという。
「基本的には食べることも好きなので、ちょっと興味があるものがあれば食べに行って自分の舌で本当に美味しいのか確かめたいし、
その中で刺激を受けて、新しいものが作れるわけで。“作る”ということ自体が好きなんですよね。これは多くの製造者の方々も同じだと思います。
それに好きだからこそ色々な工夫やこだわりって ものも出てくるのだと思う。」
それと、これはうちのこだわりってわけじゃないんだ けど、作るうえで、いい素材同士を足してもどうしても味がくどくなることがある。そういう時はあえて引き算をしてちょうどいいところを探していく。この考え方はどの分野・業界でも根本的には同じだと思います。」
また岩城さんは今の若者について、ランダムでもいいからいろいろなことに取り組んでみて、気張らずにできる、そして仕事時間が長くてもあまり苦にならないと思える、自分に合った仕事を見つけて欲しいと語る。
そのうえで、「学生でも社会人でもやらないといけないことは勿論あるんだけど、一度しかない人生だし物事を自分で決めてその時その時を“楽しむ”、ことかな。」
それが、後悔しない生き方の秘訣だという。
働き方改革が唱えられ、企業でも残業時間の削減や「副業」の容認など様々な取り組みがなされている。
大卒の就職についても、今までよりも「就活」が前倒しで行われつつあり、要になっている。
これから先「働き方」はより多様化すると思われる が、その時、私たちは「働き方」ではなく、「なぜこの仕事なのか」「ここで働く意味とは?」について、 今以上に頭を悩ませることになるかもしれない。
【お店紹介】 和菓子 いち月
苺が丸ごと入った苺大福が人気。また、オーダーメイドの和菓子注文も可能。
〒273-0035 千葉県船橋市本中山3-21-10
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