参議院も目前に迫っていますが、皆さんは選挙に関するニュースなどは気にしていますか?今回は、選挙の話題でよく耳にする「一票の格差」とは何か説明したいと思います。
一票の格差とは?
簡単に言うと、国民一人一人が持つ票の価値(重み)が平等ではない、ということです。
選挙区(一定数の議員を選出する為の地理的な仕切り)によって人口数、つまり有権者の人数は違いますよね。有権者の多い選挙区では、有権者の一票の価値は軽くなりますが、有権者の少ない選挙区では、有権者の一票の価値は重くなります。
これは、国民によって政治に反映される声の大きさが変わってしまう、とも捉えられます。
憲法14条において、国民は「法の下に平等」とされています。しかし、一票の格差問題がある限り、本当に一人一人が平等な権利を有していると言えるのでしょうか?
問題の経緯
実はこの問題、日本では長年大きな問題として取り上げられてきました。
注目が集まったのは1962年に弁護士の越山康さんが同年の衆院選の選挙無効を求めて提訴したことです。これに対し、1972年に最高裁は初めて1972年の衆院選を違憲とする判断を下しました。その後も国政選挙のたびに一票の格差に対する起訴が行われ、違憲判断が次々と下されました。
これに対し、1996年から「小選挙区比例代表並立制」が導入されました。それ以前は、一つの選挙区から3~5人を選ぶ「中選挙区制」が採用されていました。小選挙区制が導入された背景には、相次ぐ金権スキャンダルなど様々な理由がありましたが、この制度改革により票の価値の最大格差を下げることができました。
また、2012年には一票の格差のさらなる是正のために、「0増5減」という制度が国会で可決されました。これは福井、山梨、徳島、高知、佐賀の選挙区の定員数を一ずつ減らすことで、票の格差を直そうという試みです。
2016年には人口の少ない高知県と徳島県、島根県と鳥取県を同じ選挙区として合体させる「合区」も導入しました。
2017年にも「0増6減」が行われ、区割りも変えることで格差を2倍未満に抑えることに成功しました。さらに2020年には、人口比がより正確に反映できると考えられている「アダムズ方式」を採用することも決定しています。こういった改革を受けて、一票の格差が最大1.98倍に収められた2017年衆院選を最高裁は「合憲」と下しました。
しかしその一方で、一票の格差を巡る国の対応には非難の声も多く見受けられます。
特に2018年に公職選挙法改正案が可決され、参議院の定数を6増加させ、特定枠という形で党ごとに拘束名簿式を導入した時は非常に大きな議論を呼びました。
この改正は、合区によって擁立できなくなった自民党の候補者を救済させるための自民党の試みだとして大きく非難されています。
そして、この定員数の増加は今回の参院選から適応されます。参院選に行く前に是非チェックしておきたい問題ですね。
最後に
一票の格差ってどういう問題なのかわかっていただけたでしょうか?私たち一人一人が有権者として、自分が他の人と平等な権利を有し、政治に自分の意見を反映させられることができる社会になって欲しいですよね。この問題はこれからも大きな議論を呼ぶと思います。今後の展開も是非チェックしてみてください!
参考文献
「3分で分かる司法の話「1票の格差」訴訟 どんな格差で何が問題なのか」(2018年12月18日)https://mainichi.jp/articles/20181218/org/00m/040/005000c
衆院1票の格差 国会の是正策が「合憲」導いた」(2018年12月20日)https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190227-OYT1T50167/
「17年衆院選の1票の格差、「合憲」最高裁判決」(2018年12月19日) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39132810Z11C18A2CC1000/.
「【図解・政治】参院選2019・参院選の改選数変更(2018年12月)」https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-sangiin20181229j-01-w400
「図解で納得 アダムズ方式って何?」(2016年4月13日)https://mainichi.jp/articles/20160409/mul/00m/010/01100sc.
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