正直フェミニズムって何?

政治コラム

いきなりですが皆さんに質問です。

男女などの性別関係なく皆が平等に暮らせる社会を目指そう、という考えに賛成しますか?

上記の質問に「はい」と答えた方に、更に質問です。

あなたはフェミニストですか?

二つ目の質問にどう答えたらいいのか困った方もいるのではないでしょうか。例えば私の周りでは、「男女平等は支持するけど自分はフェミニストとまで言えるのか分からない」や「フェミニストは女性主義的政治的な活動をしている人のイメージがある」という声が多くありました。また、ひと昔前だと「フェミニスト=女性に優しい、紳士的な男性」というイメージがあったらしく、フェミニストとはそもそも誰のことを指すのか意見は様々だということが伺えます。

しかし、上の二つの質問、実は全く同じことを聞いているのです。今回は、知っているようで本当は全く知られていないフェミニズムについてご紹介します!

フェミニズムとは?

まず、上の質問から説明しましょう。「フェミニスト」という言葉はもともと英語からきていて、Oxford English Dictionary(オックスフォード英語辞典)によると、

Feminist

“A person who supports feminism”

「フェミニズムを支持する人」

English Oxford Living Dictionaries, Oxford University Press, 2019

と定義されています。では「フェミニズム」とは何でしょうか。辞書では以下のように書かれています。

Feminism

“The advocacy of women’s rights on the ground of the equality of the sexes”

「男女平等を目的に、女性の権利を支持すること」

English Oxford Living Dictionaries, Oxford University Press, 2019

つまり、差別なく男性と平等な権利を行使できるように女性を支えようという思想が本来のフェミニズムです。政治とは何の関わりもありませんね。しかし、日本に限らず世界でも、フェミニズムと言えば次のようなイメージがあります。

  • 女性主義
  • 政治的・社会的な運動
  • 暴力的 ・過激
  • 男性と立場を逆転させようとしている
  • 左翼
  • 支持者が女性

この通り、フェミニズムの本当の定義は全く知られていないというのが現状です。

歴史

女性の権利を訴えた運動として歴史的に最も重要と言っても過言でないのは女性の参政権運動です。Women’s Suffrage Movementと呼ばれ、20世紀初めに欧米で大きく広がりました。当時の社会では、男性と女性で生き方や役割は全く別であるという思想が広く浸透しており、女性には家庭を守る役割、男性には仕事をして家族を養う役割が当たり前とされていました。また、「女性は感情的」だという当時の一般的な考えのもと、女性に政治参加という重要な役割は任せられていませんでした。

このような中、アメリカを中心に女性に選挙権を求める活動が行われるようになり、大きく分けて二つの団体が誕生しました。National American Woman Suffrage Association (NAWSA)とNational Woman’s Party (NWP)です。NAWSAは比較的穏健で、論理的に説明することで政府を説得させようと試みましたが、比べてNWPはホワイトハウスの前でストライキを起こしたり、断食してハンガーストライキを行ったりなど過激派でした。また、イギリスでも似たような団体として女性メンバーのみのWomen’s Social and Political Unionが存在し、デモとして街中で物を壊していたため、「フェミニズム=暴力的」というイメージが定着してしまったのだと思われます。

しかし、結局どちらの活動も無効で、皮肉にも第一次世界大戦中に工場などで女性の労働者が活躍したことでようやく参政権が与えられたと言われています。

日本でも似たような運動が起こり、平塚らいてうと市川房枝が女性の社会的地位を高めるため1920年に新婦人協会を設立し、参政権を求める活動を始めました。

参考文献:笹山晴生 佐藤信 五味文彦 高埜利彦「詳説 日本史」山川出版社

なぜ今フェミニズムが注目されている?

フェミニズムとは、性別問わず全ての人が平等に生きる社会を目指した、昔からある思想だと説明してきました。しかし、特に最近になってフェミニズムの政治的な運動は勢いを見せています。なぜまたフェミニズムが大きく注目されるようにようになったのでしょうか?

2016年米大統領選挙

現在フェミニズムの運動が広がっている理由として、最初に挙げられるのはトランプ大統領への抵抗です。2016年の米国大統領選挙を思い出してみて下さい。民主党からは元上院議員でファーストレディーも務めたヒラリー・クリントン氏、共和党からは政治とは無関係のビジネスマン、ドナルド・トランプ氏が候補者として出ていました。クリントン氏が当選すれば米国初の女性大統領でしたし、数々のスキャンダルや問題発言を起こしたトランプ氏が当選するのも前代未聞だとして、世界中から非常に注目された大統領選挙でした。

結果としてトランプ氏が当選しましたが、この時彼は多くの女性からセクハラを訴えられたり、女性を軽蔑するような発言を繰り返したりして「女性の敵」のような存在になっていました。そしてトランプの当選を批判するために行われたのが Women’s Marchという、国際的に行われたデモ行進です。これが最近のフェミニスト運動の始まりと言えるでしょう。

参考文献:History.com Editors. (2018, January 05). “Women’s March” HISTORY. A&E Television Networks.

#MeToo

Women’s Marchの次に大きな話題となったのは “Me Too” 運動です。2017年頃にハリウッドで大問題が起きました。映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインに対し、女優含む50人を超える女性が性的暴行やハラスメントを受けたと次々に証言したのです。これを受け、今までレイプなど性的暴行に苦しめられた女性たちが自分の経験をSNS上で語る #MeTooというタグが世界的に広まりました。この運動は日本でも大きく広がりましたね。

参考文献:Davies, Caroline and Khomami, Nadia. (2018, May 25). “Harvey Weinstein: the women who have accused him” The Guardian.

#TimesUp

もう一つ大きな運動といえば、”Time’s Up” 運動です。これもハリウッドが中心に広がった運動で、特に女性の働く環境や男女間の給料の差を解決しようと活動していました。また、この運動を支持するために多くの俳優や芸能人はシンボルカラーである黒の衣装を着てイベントに出席していました。

参考文献:(2019). “About TIME’S UP” Time’s Up.

このように、女性の権利を取り巻く問題が連続して起こり、またメディアを通して人々の問題意識が高まったことからフェミニスト運動が再び注目されるようになったのです。

まとめ

以上、フェミニズムについて知って頂きたい基本的なことをまとめてみました。意外と難しく考える必要はなく、単に女性の地位を男性と対等な立場まで引き上げようとしている運動なのです。そしてフェミニストは特に女性主義的でもなく、暴力的でもなく、スカートやハイヒールを履くのをやめるということでもないのです。フェミニズムの本当の意味や背景を知ることで、少しでも現在のフェミニズムに対するあなたの意見や立場などを考えるきっかけになれば嬉しいです。

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