政治観が変わる!アメリカの政治教育

政治コラム

新学期が始まりました。皆さんもフレッシュな気持ちで新しいことに挑戦しようと考えている時期ではないでしょうか。例えば、海外へ旅行や留学したいと思っている方も多いのでは?

世界の国々の中でも、観光地として、あるいは留学先として特に人気なのはアメリカでしょう。私自身、アメリカのカリフォルニア州に住んでいた経験があり、現地の中学と高校に通っていました。

現地で普通に授業を受け、普通の高校生活を送ってみて気づいたのは、日常生活の中で何らかの形で「政治」と接する機会が多いということでした。その背景には、普段からあらゆることに対して自分の意見を持とうとするマインドセットを育てる、というアメリカの政治教育観があります。そこで今回は、「政治」をもっと身近なものに感じさせてくれたアメリカ高校の政治教育と文化について紹介します。

授業:U.S. Government

まず、アメリカの多くの高校は4年制で、社会科の授業で学習する分野は学年によって異なります。基本的にアメリカ政治 (U.S. Government) を習うのは4年生、つまり18歳くらいの時です。日本と同様、アメリカ国民は18歳から選挙権があるのでとても重要な時期に政治について学びます。

どの授業でも必ずと言っていいほどあるのが「プロジェクト」です。プロジェクトとは大型の課題で、個人でやるものもあればグループでやるものもあります。また、普段の宿題と違い、ものによっては1週間から1ヶ月かけてこなします。プロジェクトは主に各個のクリエイティビティを測るため、出される課題も特殊です。

例えば、模擬大統領選挙。グループに分かれ、大統領と副大統領候補になりきって動画制作から演説までキャンペーンを行います。まず立候補者の人物や政策を紹介する動画を事前に作り、それを授業で流した後はプレゼンを通してより詳しく政策について語ります。実際にスローガンも考え、演説も行います。そして最後に投票し、当選したグループには先生がドーナツを奢りました(笑)。

この課題の意図は、実際にキャンペーンを企画することで立候補者側の視点を持つことです。なぜ国民の代表として立ち上がりたいのか、投票者に最も伝えたいことは何か、どの州に出向いて演説する必要があるか。また、同じ目的を持つ一つのグループとして効果的にキャンペーンを進めることができるか。立候補する側を体験したからこそ見えてくる困難情熱というものがあり、より投票者としての責任感や自覚が芽生えてきました。

他には、割り当てられた議員になりきって討論会を開くプロジェクトもありました。たとえ自分の個人的な意見に反していても、その議員の立場になって論じる必要があります。今まで知らなかった価値観に出会い、また自分自身の価値観を客観視できる良い機会となりました。

自由な意見交換

日本の高校では、授業の中で政治的な発言をする場面はあまり見られません。むしろ、学校ともに教員は政治的中立性の確保を求められています。教育環境や教員の言動は生徒に大きな影響を与えるため、偏りのない公正な政治的教養を目指すためには納得のいく制限です。

しかし、アメリカのカリキュラムは違うものを優先して目指していました。自己主張です。自分の力で考え、意見を持ち、しっかりと主張できるようになる。そして意見を交換することで視野を広げていく。自分の主張を考え直させられるような刺激的な意見に出会うこともあれば、全く同意できない意見に出会うこともあります。このような意見の出会い」を繰り返すことで考える力や主張力を伸ばす、というのがアメリカの目指す政治的教養です

そのため、私の受けた授業の先生や同級生ははっきりと自分の政治的意見を述べていました。カリフォルニア州は民主党派がほとんどの、いわゆるブルーステイトであり、私の先生も民主党を支持していました。共和党のトランプ氏が当選した翌日は、クラスに葬式のような暗い空気が漂っていたのを鮮明に覚えています。それだけ自分の意見や考えをオープンに示すのです。また、友達との間の何気ない日常会話の中で政治的な意見交換をするのは当たり前のことでした。そして、友達の意見と完全に同意できなくても、多様な意見を尊重しようという意識が生まれました。

少しでも自分の意見を持とうと考え始めると、自然と様々な話題に興味を持つようになり、問題意識が身につきます。私は家族とも日常的に意見交換するようになり、気になるニュースがある度にお互いの見解を聞きます。皆さんも、まずはあらゆる問題点や論点に対して自分はどの立場をとるか、些細な話題からでも良いので考えてみてはいかがでしょうか。

“Go out and vote!”

どこへ行っても、誰と話してもよく耳にしたのが「投票に行こう!」でした。政治とは全く関係のない授業であっても、ほとんどの教員たちはひとこと投票に行く重要性について言及していました。また、アメリカでは18歳になっても主権者登録をしない限り投票できません。そこで学校が主体となり、18歳以上の生徒が授業時間を使って登録申請書を記入する機会を設けました。さらには、申請書の提出も学校が担いました。私はちょうど大統領選挙のあった2016年にアメリカ政治の授業を受けましたが、市民権は持っていなかったため残念ながら主権者登録はできませんでした。しかし、クラスで皆が誇らしげに初めて投票に行った話をしているところは非常に印象的でした。

教育機関だけではありません。選挙の時期になると、多くの芸能人がSNSを通して投票に行くようフォロワーに呼びかけていました。投票すると誰でも “I Voted” (「投票しました」)という小さなシールがもらえます。そのシールを身につけた写真をSNSに投稿し、まわりに投票に行くよう促すことで、ネット社会だからこそ政治意識や主権者としての自覚を広めることが実現できたのです。

終わりに

こうして振り返ると、アメリカの高校生活は大変でありながらも貴重な経験に恵まれていました。それまで私は「政治は硬い」という印象を受けていましたが、実はごく身近であることに気づかされました。アメリカの高校生活を送っていく中で、私の中の政治観がしっかりと形成されていき、他の意見にも耳を傾けることで視野が一気に広がったように感じます。

皆さんも日本と全く違う文化に触れることで刺激的な経験をしてみてはいかがでしょうか。きっと新たな発見があるはずですし、自分の価値観や政治観を見つめ直す良いきっかけにもなります。

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