安倍政権の通信簿 7年8か月を振り返る

安倍政権の通信簿 7年8か月を振り返る

8月28日午後2時7分、日本中に衝撃が走った。

第90、96・97・98代内閣総理大臣である安倍晋三首相が辞任の意向を固めたという報道が流れた。

平成24年12月26日に第96代内閣総理大臣に指名されてから7年8ヶ月もの間日本政府のトップとして率いてきた安倍首相が辞任することになった。若者にとって「総理大臣=安倍晋三」のイメージ強く、総理大臣が交代することは記憶の中では初めての経験となる人も多いだろう。

この記事では、平成24年からの第2次政権以降を中心に安倍政権をテーマごと、そしてキーワード解説とともに総括する。なお、この記事のタイトルに通信簿と書いてあるが、この7年8ヶ月をどのように判断するかは読み手の方々にお任せしたい。

安倍晋三首相のあゆみ

安倍首相は昭和29年9月21日に東京都の生まれ(本籍地は山口県長門市)で、親族に麻生太郎副総理や佐藤栄作元首相、岸信介元首相などがいる。成蹊小・中・高を経て成蹊大学法学部政治学科を卒業(南カリフォルニア大学への留学経験もある)。企業勤務ののちに父の安倍晋太郎元官房長官の秘書官を務める。

その後父の急死を受け、父の地盤から平成5年の衆議院選挙に自由民主党から立候補し当選。自民党では現在の細田派に所属した。平成14年には内閣官房副長官として北朝鮮へ日朝首脳会談に同行し、拉致問題解決の前進に大きく貢献した。

平成18年9月に自民党総裁に選出され、内閣総理大臣に戦後最年少の52歳で指名された。その後第1次安倍政権が発足し「美しい国」をテーマに政権運営を行ったが持病で難病の潰瘍性大腸炎が悪化するなどして、平成19年9月に在任期間366日で辞任した。

その後民主党政権だった平成24年に政権を奪還し、内閣総理大臣に再び就任。「アベノミクス」と呼ばれる経済政策や安全保障の見直し、2度の消費増税などを行い社会に大きな影響を与えた。

令和元年には通算の在職日数が、令和2年には連続の在職日数がそれぞれ憲政史上最長となったが、持病で難病の潰瘍性大腸炎が悪化したことなどから国政に支障が出る事態は避けたいとして令和2年8月28日に辞意を表明した。

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自由民主党

略称は「自民党」。昭和30年11月に結成された従来からの伝統・習慣・制度・社会組織・考え方などを尊重する保守政党。

現在の政権を担っていて国会では3分の2に迫る多数の議席を獲得している。保守の考えだけでなく憲法改正や同一労働同一賃金などの革新的な考えも一部取り入れおり多くの大企業や中小企業などが加盟する各経済団体や農業従事者、高齢者を中心に全ての年代から支持を得て、各社で行われている世論調査ではほかの党を大きく引き離している。

令和元年の参議院議員選挙での出口調査では投票先として自民党が全ての年代で最も多く、特に若者と高齢者が自民党に多く投票しているという結果になった。

細田派

正式名称は「清和政策研究会」。昭和54年に設立された自民党の派閥。保守の名門派閥で親米、憲法改正、再軍備に積極的な主張をする人が多く加入している。

美しい国

平成18年頃から安倍首相の理念を表す言葉として使用された。第1次安倍政権では「活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、『美しい国、日本』」を目指して政権運営が行われた。

民主党

平成10年に結成し平成28年に解散した中道左派政党。

自民党に対する不信があった平成21年の衆議院議員選挙で3分の2に迫る議席を獲得し政権交代を行ったが、国民の期待に応えることができず平成24年に政権を失った。保守から革新まで幅広い議員が所属しており労働組合などから支持を集め、自民党に対抗できる勢力となっていた時期もあった。

法規上は平成28年からの「民進党」と平成30年からの「国民民主党」と同じ政党という扱い。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは大腸の粘膜が炎症を起こし、激しい腹痛や下痢を繰り返す慢性疾患。厚生労働省が難病に指定している。原因はよく分かっておらず国内の患者数は難病の中では最も多い16万6000人以上にものぼる。大腸を摘出しなければならない場合がある。

アベノミクス

第2次安倍政権以降の経済対策対策のこと。デフレからの脱却や持続的な経済成長を「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「成長戦略」の3本の矢で目指した。「アベ(安倍首相の苗字)」と「エコノミクス」の造語で1980年代のアメリカレーガン大統領の「レーガノミクス」と呼ばれる政策にちなんでいる。

ここからは具体的な政策ごとに第2次安倍政権を振り返っていく。

教育政策

教育面では「教育再生」を掲げさまざまな改革を行った。

6・3・3・4制の見直しなどの「平成の学制大改革」を実施し、幼児教育の無償化と所得が一定程度より低い学生を中心にの高等学校と大学の実質無償化を実現。高校の普通科再編や小学校5・6年の教科担任制を本格的に検討するなどの政策を進めた。また「特別の教科 道徳」の教科化やいじめ対策の法制化を行い道徳性の育成に力を入れたほか、待機児童削減やキッズウイーク導入なども行った。

平成29年には「人づくり革命担当大臣」を新設し、子どもへのユニバーサルな教育機会の提供や社会人の学び直しを推進した。

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待機児童

保育施設の利用が必要で申し込みをしているが利用できていない児童のこと。「保育園落ちた日本死ね」という書き込みがあったほど深刻な問題となっている。子育て支援が働く女性の支えることは間違いないだろう。

キッズウイーク

平成30年から行われている地域ごとに学校の夏休みなどの長期休業日を分散化することで、大人と子供が一緒にまとまった休日を過ごす機会を創出しやすくするための取組みのこと。

労働問題

労働問題では「1億総活躍社会」を掲げ、男女共同参画、同一労働同一賃金の実現やプレミアムフライデー、時差bis、夏季は朝早くから働き始め、明るい夕方に仕事を終わらせ家族や友人との時間を楽しむ「ゆう活」などの「ワークライフバランス」の推進、時間外労働の罰則付きの上限規制を行った。

また就業者数は6280万人だったが6724万人に増加し、完全失業率も安倍政権発足前は4.3%となっていたが現在では2.5%前後で推移した。

最低賃金も政権発足前は全国平均で749円だったが「1億総活躍プラン」を打ち出し、将来的に全国の平均で1000円に達するように毎年3%程度引き上げていくという目標を掲げ令和2年10月には902円にまで上がる予定だ。

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一億総活躍社会

一億総活躍社会は、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会である。

同一労働同一賃金

同一企業・団体において正規雇用労働者とパートタイマー、派遣労働者などの非正規雇用労働者の待遇の差を解消するもので正社員とアルバイトでも同じ仕事をしていれば、同じ賃金となるということ。働き方改革の一環。

時差Bis

働き方改革の一環で通勤時間の混雑を緩和するため時差出勤や在宅勤務を企業に呼びかけ、参加を募るキャンペーンのこと。平成29年から東京都主導して行っている事業。

就業者数

賃金、給料、諸手当、内職収入などの収入を伴う仕事を1時間以上した者(従業者)と、仕事を持ちながら調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち給料・賃金の支払を受けているもしくは受けることになっている者または自営業主で、自分の経営する事業を持ったままその仕事を休み始めてから30日にならない者(休業者)を足したもの。

完全失業率

15歳以上の人口のうち、「就業者」と仕事がなくて少しも仕事をせず、仕事があればすぐ就くことができ、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた「完全失業者」を合わせた「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合のこと。

最低賃金

最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度で、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類がある。

経済対策

経済対策では「アベノミクス」を打ち出し、デフレからの脱却や持続的な経済成長を「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「成長戦略」の3本の矢で目指した。

「アベノミクス」の成果として2年で2%の物価上昇を目指した日本銀行が異次元の金融緩和を行い安倍政権発足前は1万円を割ることがあった日経平均株価は2万円台にまで回復した。一方で日銀が目指した2%の物価上昇は達成できていない。

また為替でも1ドル100円を大きく割っていた超円高から現在では1ドル100〜110円台となっている。

また企業の業績も改善し、仕事を求めている人1人に対して企業から何人の求人があるかを示す有効求人倍率が全国平均で1を超え、初めて47都道府県全てで1を超えた。正社員求人倍率も0.5だったが1を超えた。

GDP=国内総生産は伸び率が2.6%に高まりおよそ40兆円増加したもののほとんどの年度で伸び率が0〜1%台となっていて景気回復の実感がとぼしいとの声が多くなっている。

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日本銀行

物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行のこと。日本銀行券(お札)の発行・流通・管理や金融政策の運営、政府のお金の管理などを行っている。政府の組織ではない。

日経平均株価

東京証券取引所第一部に上場する株の銘柄のうち取引が活発な225の銘柄を日本経済新聞社が選出し、公開している株式指標のこと。Nikkei 225とも呼ばれる。

為替

この場合は自国通貨と外国通貨とを交換する外国為替のことを指す。通貨を異にする国際間の貸借関係を、現金を直接輸送することなく、為替手形や送金小切手などの信用手段によって決済する方法。

有効求人倍率

仕事を求めている人1人に対して企業から何人の求人があるかを示す指標。雇用動向を示す重要指標のひとつで、景気とほぼ一致して動くことが特徴。

GDP

居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額のこと。1年間の国全体の儲け。

安全保障

安全保障の分野ではさまざまな改革を行った。安全保障分野の政策には賛否両論が巻き起こり政策や安倍首相が内閣総理大臣であることに反対する学生などの運動が活発になった事もあった。

平成25年には安全保障に関する重要事項を審議する機関として、内閣に「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設置する法律を成立させ、首相官邸における外交・安全保障の司令塔機能の再編・強化と首相官邸主導体制の確立を進めた。

国家安全保障に関する情報がスパイなどによって中国やロシアなどの仮想敵国を中心とした外国へ漏えいする事件がたびたび起きていたことから、平成25年には安全保障上の秘匿性の高い情報の漏えいを防止し、国と国民の安全を確保するため「特定秘密保護法」を施行し、特定秘密の指定をするための要件と手続並びに特定秘密の漏えい行為等の処罰を定めた。「特定秘密保護法」によって政府が公文書を恣意的に管理できるのではないかという批判があったことから、内閣府に独立公文書管理監、衆参両院に情報監視審査会を設置し公文書管理が政権の都合によって左右されることはなくなった。

また、日本を取り巻く安全保障環境が変化し、日本周辺での脅威が増大していることから平成26年にこれまでの憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を限定的に容認することを閣議決定し、平成27年に「平和安全法制」を成立させた。

一方で、「平和安全法制」をめぐっては反対デモが特に活発になり、学生団体の「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs、シールズ)」や9人の作家によって結成された「九条の会」に代表される法案反対派、護憲派団体が「戦争法(平和安全法制のこと)反対」、「アベ政治を許さない」などと反対デモを行い、法案や政権に関して世論を喚起したが行動は身を結ぶことなく終わり、その後の選挙でも安倍首相率いる自民党の勝利となった。

東京オリンピック・パラリンピックに向け「国際組織犯罪防止条約」の締結(締結するには重大犯罪の共謀を犯罪とすることが前提)をすることやテロ対策に万全を期すために平成29年「組織犯罪処罰法改正案」の成立によって「テロ等準備罪」が創設され、「国際組織犯罪防止条約」に批准し、組織犯罪の準備行為があった段階での組織的な犯罪集団の取り締まりや犯罪後に実行犯だけではなく犯罪の立案者も取り締まることができるようになった。この法案でも反対派がデモを行うなど世論の注目が集まり、内閣支持率の一時的な低下につながった。

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安全保障

安全保障は多くの場合国家安全保障を指し、ある集団が生存や独立などの価値ある何かを、何らかの脅威が及ばぬよう何かの手段を講じることで安全な状態を保障すること。また、その目的のための体制・組織のことをいう。

国際組織犯罪防止条約

組織的な犯罪集団への参加・共謀や犯罪収益の洗浄・司法妨害・腐敗等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約のこと。

外交

外交分野では「外交の安倍」と称された一方で、安倍首相の外交姿勢から「売国の安倍」と批判されたこともあった。安倍首相は「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、これまでに内閣総理大臣として81回の外国訪問、のべ176の国と地域を訪問した。

経済ではTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉を進め、ヨーロッパとはEPA=経済連携協定を結び世界最大の自由貿易圏を築いた。

2016年のG7伊勢・志摩サミットや2019年のG20大阪サミットを開催し、同じく令和元年に行われた天皇陛下の即位に伴う即位礼正殿の儀に出席された195の国と地域の国家元首などを迎え入れるなど国際社会の中で存在感を見せた。

アメリカとの関係は、第2次安倍政権発足前に比べて格段に良くなった。オバマ前大統領とトランプ大統領の双方と良好な関係を構築した。安全保障政策の拡充を推進したこともあり、日米関係は揺るぎないものになり、アメリカからの情報提供も増えた。オバマ前大統領が大統領だった平成28年には現職のアメリカ大統領として初めて被爆地広島を訪れ、その半年後には安倍首相がハワイの真珠湾を訪れそれぞれ犠牲になった方を慰霊した。

2016年にトランプ大統領が大統領選挙に当選すると安倍首相は各国の首脳の中で最も早く会談を行い、両者の蜜月ぶりをアピールした。大統領就任後も、安倍首相とトランプ大統領の関係は非常に良好で他国が羨むほど。電話を含めた首脳会談は50回以上も開催された。トランプ大統領相手にここまで良好な関係を築くことができたのは安倍首相以外にいないとも言われる。インターネット上では「安倍トラ」というカップリングまで生まれるほどである。

ヨーロッパとの関係も良好で、自由貿易協定を結ぶなどこれまで以上に結びつきを強めている。

中東との関係も良好で、アメリカとイランの対立では板挟みとなった日本が双方と対話を行うなどして関係改善に向けて努力しパイプ役としての役割を果した。他の中東諸国との関係も良く、石油を通しての外交を行った。

中国との関係では経済をめぐる関係を強化し、一時期関係が悪化していた日中関係を立て直した。しかし米中貿易摩擦から始まった事実上の新冷戦ではこれまでの安全保障はアメリカ、経済は中国という方針を転換させる必要があり、難しい舵取りを迫られる中、次の内閣総理大臣へ引き継がれることとなった。

ロシアとも首脳会談を重ね、プーチン大統領と30回近く会談したが北方領土問題に大きな前進はなく、北朝鮮との間にある核・ミサイル問題や拉致問題の解決の糸口をつかめない状態が続いた。韓国との間でも慰安婦問題や太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題、竹島の韓国による不法占拠の問題などが解決せず、日韓関係の冷え込みを招いた。

安倍首相の辞任について公共放送NHKが外務省幹部の反応として「安倍総理大臣が各国首脳との信頼関係を築いてきたことは、日本外交にとって大きな意義があった。安倍総理大臣の時に、集団的自衛権の行使を含む安全保障法制を整備することができたが、これがなければ、アメリカのトランプ政権と渡り合っていくことはできなかったと思う」と述べたと伝えた。

また、別の外交・安全保障担当幹部は「これだけ長い間、総理大臣を務めた人がいなくなるので、外交面での影響は非常に大きい。特にアメリカのトランプ大統領とは首脳どうしの個人的な信頼関係があったので、辞任によって日米関係にどのような影響が出るのか懸念している」「安倍総理大臣はアジアや中東などでも知名度と存在感は大きく、今後は、今までのような影響力を発揮できなくなるのではないか。後任人事については、各国から大きな注目が集まるだろう」と述べたと伝えた。

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TPP

太平洋の辺縁に位置する環太平洋地域の国々の経済の自由化を目的とした経済連携協定のこと。関税の撤廃や著作権保護期間の統一、投資に関わるルールなど幅広いルールを構築し、11か国が参加する。11か国には合わせ約5億人が暮らしており、GDPの合計は、世界経済の13%ほどを占める約10兆米ドル。

米中貿易摩擦

アメリカと中国の貿易問題。超大国アメリカと21世紀になり頭角を現した中国の覇権争い。知的財産やスパイ、貿易赤字をめぐる争いで両者が激しく対立した。

新冷戦

米中貿易摩擦が米中貿易戦争にまで発展したことを表す語。アメリカを中心とする西側諸国と中国などの対立に発展した。ヨーロッパ諸国の多くは新型コロナや香港問題、新疆ウイグル自治区での弾圧問題で中国との対立姿勢を鮮明にした。アメリカが中国に厳しい制裁を課し、中国は追い詰められていることや南シナ海、東シナ海の問題から軍事的な緊張も高まっている。

アメリカとイランの対立

イランは1979年の「イラン・イスラム革命」によって親米国家から反米国家となり、同じ年にアメリカ大使館占拠事件が発生し444日間もの間アメリカ大使館が革命指導者を支持した若者らによって占拠された。この革命と事件が決定的となりアメリカとイランの関係が悪化した。2015年に当時のオバマ大統領が「イラン核合意」という歴史的な合意をしたが現在のトランプ大統領が破棄し再び関係が悪化している。

東京オリンピック・パラリンピック2020

東京オリンピック・パラリンピックでは招致段階から大きく関わり、東京招致に貢献した。

2016年のリオデジャネイロオリンピックの閉会式では、日本生まれの人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の「マリオ」にふんした安倍首相が登場したことで話題になった。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で東京オリンピック・パラリンピックを1年延期することを提案し、IOC=国際オリンピック委員会と合意。史上初の大会延期を決めた。1年後に延期が決定した後も「完全な形で実施する」と述べてオリンピック・パラリンピック成功への意欲を見せていた。

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応をめぐっては、初動対応の遅れが批判を呼んだ。

第1次・第2次補正予算では、世界最大級の規模で新型コロナ対策に打ち込んだが実際に経済生産を押し上げる効果のある予算である真水が少ないなどの指摘があった。

新型コロナ関連の支援策は3月10日に第一弾として雇用調整助成金などを表明。その後個人向けには1人10万円の定額給付金や休業手当の直接給付、児童手当の増額、学生に最大で20万円を給付、児童扶養手当受給世帯に5万円を給付、臨時休校に伴う休暇取得支援、個人向け小口貸付の特例などを、事業者、企業向けには持続化給付金やNHK受信料の免除、家賃支援、融資支援、国税の減免などの支援をした。しかし、給付が遅れるなどのトラブルが相次ぎ、政権批判や支持率低下につながった。

また1世帯に2枚の布マスクを配布する政策では布マスクの配布が遅れるなどの問題があり、国内外のメディアからバッシングを受けたがマスク配布政策はシンガポールやタイ、フランスなどでも行われた。

この新型コロナ関連の対応で安倍内閣の支持率は大きく下がり、過去最低の水準にまで落ち込み回復しなかった。このことやメディアの激しい批判や国民の批判が持病の潰瘍性大腸炎の再発につながったとの指摘もある。

憲法改正

今の憲法は時代にそぐわない部分が多いとして21世紀にふさわしい憲法に改正することの意欲を見せていた。多くの憲法学者などが自衛隊を違憲だとしていることなどから憲法9条に自衛隊の明記などすることを主張。国会の憲法審査会での議論が進まなかったが、自民党総裁任期中に憲法改正の国民投票の実施を実施したいとの考えを表明していた。

その他の問題

多くの政策に取り組んだ一方で安倍政権にはさまざまな疑惑が浮上した。

森友加計問題

森友学園をめぐる問題では、国有地売却をめぐってゴミの撤去費用などとして安く売却したことや連日の国会審議で疲弊した財務省職員が審議を簡略化するために書類を改ざんしたことで公文書管理のあり方が問われた。この問題では国有地の値引きと公文書改ざんに安倍首相首相の直接的な関与があったのではないかとされたが現在までに有力で有効な証拠は出てきておらず疑惑が残っている。

加計学園の問題は昭和41年以降新設されてこなかった大学の獣医学部の新設をめぐって「国家戦略特別区域」に指定された愛知県今治市で岡山理科大学に獣医学部が新設されたが、岡山理科大学の設置者である学校法人加計学園の理事長が安倍首相の友人であったことから安倍首相が加計学園に便宜を図ったのではないかという問題。この問題でも安倍首相が関与したという有効な証拠は出てきていない。

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国家戦略特別区域

安倍政権が打ち出した成長戦略に基づく地域振興と国際競争力向上を目的に規定された経済特区。指定されたエリア内では、従来の規制を大幅に緩和される。

桜を見る会

昭和27年から毎年春に行われている総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐって平成31年の桜を見る会が当初の予算の3倍となる約5200万円に上ったことが発覚したことによる問題。自民党関係者や安倍首相後援会の参加が多数確認されたことから、以前から安倍首相らに私物化されていたのではないかとの批判された。

終わりに

これまで7月8か月もの長期にわたって日本国及び日本国政府を率いてきた安倍首相。成果をあげた政策があった一方で結果を出すことができなかったも政策あり疑惑も上がったが、インターネット上での人気は高かった。この7年8か月は間違いなく歴史の1ページに残るだろう。

自身の健康問題によって辞任することは安倍首相にとっても多くの国民にとっても残念なことであるはずだ。安倍首相の健康を揶揄する声がインターネット上を中心に見られたが、このようなことはあってはならない。私たちは1個人としても回復されることを心から願っている。私たちはこれからも政局がどのようになるのか、注視し続けたい。

※記事内の安倍首相の表現について役職を指す場合には「内閣総理大臣」を使用し、個人を指す場合は「安倍首相」を使用。

※外交分野の出来事の年表記は西暦で行い、それ以外で元号で表記した。

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