基礎研究が未来を拓く ~「選択と集中」の先にあるもの~

政治コラム

イントロ

阪大からはiPS細胞の角膜治療への臨床研究計画が発表され、また京大からは拒絶反応のリスクをより抑えたiPS細胞の開発がアナウンスされました。

現在、iPS細胞に関する研究は役に立つものであると選択され、これからも集中的に研究が進められることと思います。

しかし、そんな研究が昔は訝しげに見られていたことは知っていましたか?

今なお京都大学のHPで寄付などの支援を募っていることは知っていましたか?

iPS細胞の利点とは

幹細胞と呼ばれる細胞は、「細胞を作る」という役割を持っています。作り出される細胞は様々な細胞に分化することが可能であり、ヒトの身体の成長や再生を司る器官です。

受精卵はすべての細胞の元ともいえます。そこで胚子(生殖に必要な細胞)を基に作られるES細胞という人工の肝細胞が研究され、臓器再生などに一役買うのではと考えられていました。

しかし、ES細胞は受精卵から作られるものであるため、倫理上の観点から扱いが難しい側面を持っていました。

山中教授はES細胞について研究していく中で、人工的に肝細胞を作るための因子を特定し、受精卵を用いず体細胞から作ることが可能なiPS細胞というものを作り出しました。

これにより人工肝細胞の医療応用への道が拓けたと言っても過言ではなく、山中教授はその功績からノーベル賞を受賞したのです。

iPS細胞が生まれるまでに必要だったもの

現在iPS細胞は臨床段階にあり、治療法の一つとして浸透していく未来も近いかもしれません。

しかしこの段階に至るまでには、多くの研究を礎としてきた過去があります。

iPS細胞は、今までにあったES細胞をより詳しく調査することにより生まれました。ES細胞に関する基礎研究が、iPS細胞という応用、ひいては医療利用につながったのです。

基礎研究というものは、物体や事象の特性を調査すること自体が目的になります。直接的な結果が見えにくく、どういった成果を生み出したのか評価しづらい点から、存在意義を疑問視されることもあります。

しかし基礎研究を怠る先進国はありません。基礎研究から行うことで特許を獲得しやすいことや、応用研究しかやっていない国は新規性が低く、他国の基礎研究の成果を「盗んでいる」ように見られてしまうことが理由として挙げられます。

「選択と集中」の先にあるもの

研究には先立つものが必要になりますが、多くの研究に対して分配できるほどの予算はついていません。資金分配について、昨今ではドラッカーから引用されたような「選択と集中」という言葉も聞かれます。

仕方ない側面もありますが、この選択は誰が判断するのかなど課題は多いです。役人側にも高度な判断が行える人材が必要になってきますが、評価されづらい基礎研究がいっそう厳しい立場になるとすれば、大きな研究成果を得ることは難しくなってしまいます。

研究内容や研究者の素質に目を向けることなく、プレゼンによって資金分配が大きく左右されるようなことになれば、技術力の衰退は免れないでしょう。

広い視野と多大な候補の比較、これは研究においても、また評価や選挙においても重要なことと思います。

「選択する側の責任」はこれからの時代、より一層重いものになっていくのではないでしょうか?

参考文献

iPS細胞の基盤を支える研究

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