前編に続き、今回も領土問題をテーマに執筆しました。前編をご覧になられていない方は、こちらもあわせて読んでみてください。
本記事では日本の領土問題のみならず、世界の領土問題へと視野を広げ、実際に解決に至った事例もご紹介しようと思います。
竹島
東京からソウルまで飛行機でおよそ2時間半。また九州からは船を利用した日帰りツアーもあるそうです。
そんな地理的に近い韓国にもかかわらず、日韓関係は近年悪化傾向ですね。
日韓関係悪化の原因の一つとしては、竹島問題(韓国では独島と呼ばれる)があります。
両国はどのような主張を行っているのか見てみましょう。
両国の主張
日本の主張「我が国は遅くとも江戸初期には領有権を確立していた。そのことは文献、地図から確認できる。またその時代に、同島において、幕府公認のこと日本人が漁猟を行い、独占経営状態であった。」
参考:外務省 竹島の領有 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/g_ryoyu.html
韓国の主張「12世紀ごろの韓国の文献において、竹島についての記述が存在する。朝鮮王朝時の地図のほとんどが竹島を自国領としている。1898年の『大韓国全図』においても、大韓帝国に帰属していることが確認できる」
参考:「独島/竹島 韓国の論理」著 金学俊
このように、双方の歴史文献、地図にも矛盾点がありますね。
アメリカはどう見てる?
アメリカは日本、韓国共に関係が強いですね。では第三者のアメリカは竹島問題をどのように見ているのでしょうか?
結論から申し上げますと、現在、アメリカは韓国領の見方であると考えられています。これは多くの方が驚くことではないでしょうか?
ではなぜなのでしょうか?
①韓国の実効支配
現在、竹島は事実上韓国が実効支配をしています。また開発事業も進んでいることから韓国領の立場であると考えられます。
②米国の地名委員会
あくまでアメリカの一機関であり、国際機関ではありませんが、アメリカの地名委員会United StatesBoard on Geographic Namesで竹島を検索すると、所属国は韓国と表示されます。
このように、私たちが思っている以上に、日本人の声はアメリカに届いていないことが分かりますね。
世界の領土問題
世界にも未だ数多くの領土問題が存在します。いくつかご紹介しましょう。
カシミール問題
画像引用: 朝日新聞デジタル「カシミール問題」 https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C.html
インドとパキスタンにおける領土問題です。また中国の国境にも接しているので、中国も介入してくることもあり、非常に複雑です。
インドとパキスタンは元イギリス領で第二次大戦後に両国は独立を果たしました。
しかしこの領土の帰属は曖昧であり、今日まで紛争が絶えない地域です。また両国は互いに核保有国であり、他の領土問題と違った緊張感があります。
パレスチナ問題
パレスチナには非常に長い歴史があります。なかでもエルサレムという都市はキリスト教、ユダヤ教、イスラム教にとっての聖地であり、宗教的にも非常に解釈が難しい問題です。ここでは簡潔にご紹介します。
現在、イスラエルとアラブ諸国間で対立関係になっています。またユダヤ人(イスラエル側)は世界各地に居住しおり、彼らは資金力を持っていることから、アメリカをはじめとする外部からの圧力も存在します。
この地をめぐっては4回の中東戦争が勃発しています。日本では第4次中東戦争が原因で石油ショックが起こりましたね。このように当事者国のみならず、様々な国に影響を及ぼしています。
フォークランド諸島問題
この領土ではイギリスとアルゼンチン間で争いが起きています。
イギリスとアルゼンチン!?意外な組み合わせですね。筆者自身もサッカーの代表戦くらいでしか聞いたことがありません。
フォークランド諸島は南大西洋に位置しますが、18世紀ごろからイギリス領になっていました。
しかし1982年これにアルゼンチンが反発し、領有権を主張しました。
そして、当時アルゼンチンは軍事政権、イギリスはかの「鉄の女」と称された強硬派のサッチャー首相であり、なんと戦争へと突入することになってしまいまいした。
結果的にはイギリスが勝利しましたが、現在においてもこれをめぐる対立は残ったままです。
解決に成功した事例
世界史に詳しい方は、耳にしたことがあると思います。
それはアルザス・ロレーヌ地方です。この領土はおよそ1000年にわたってドイツ、フランス間で争われてきました。実際の支配権の流れを時系列にしてご紹介します。
アルザス・ロレーヌ地方経緯
- 5世紀 ドイツ系の部族が征服
- 6世紀 フランク王国(フランス)が統治
- 870年 神聖ローマ帝国(ドイツ)が統治
- 1469年 ブルゴーニュ公(フランス)に売却される
- 1477年 ハプスブルク家(ドイツ)が統治
- 1639年 フランスがアルザスを征服
- 1871年 普仏戦争でプロイセン(ドイツ)勝利→プロイセンが統治
- 1919年 第一次大戦でドイツ敗北→フランスが統治
- 1940年 第二次大戦中、フランス敗北→ドイツが統治
- 1944年 第二次大戦中フランスが奪還
参考:『日本の国境問題-尖閣・竹島・北方領土』著 孫崎享
このようにアルザス・ロレーヌ地方はドイツとフランス間を行ったり来たりしてますね。
領土奪還には必ず武力衝突を伴い、これまでに、数多くの犠牲者を出してきました。
しかし、長年にわたって争われてきた領土問題も戦後には落ち着きを見せ始めます。
結果的には、ドイツ首相のアデナウアー氏が大幅に譲歩する形で、アルザス・ロレーヌ地方をフランス帰属とし、領土問題を終結させました。
ではなぜアデナウアー氏は譲歩を決断したのでしょうか?
領土問題終結
確かに、ドイツはもはや領土を手放さざるを得ない状況ではありました。しかし単純に譲歩したわけではありません。
ドイツは従来の自国領土の維持という方針から自己の影響力の拡大へと戦略転換したのです。
今日の欧州行政界では金融が最も重要です。ドイツはここに目をつけました。
自国領の維持、拡大よりも欧州の指導者としての権威獲得を優先させたのです。
このような外交努力をした結果、欧州中央銀行の本店はドイツに配置されているように、今日自国の影響力を他国へ拡大させることに成功しました。
まとめ
いかかでしたか?
本記事は著:孫崎享『日本の国境問題ーー尖閣・竹島・北方領土』を参考にしました。孫崎さんは元外交官で、実際に領土問題にも従事された方です。日本は領土問題をどう解決していくべきか、具体的に書かれてありますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
世界には未だ数多くの領土問題が存在します。武力衝突の引き金となりうるこの問題に、私たちは真摯に向き合わなければなりません。
しかし今日の情勢としては、国やメディアがナショナリズムを必要以上に高揚させているのが現実です。
だからこそ事実を客観的に認識する必要があると思います。
私たち国民にできる身近なことといえば、まず自国のみならず、相手国の主張も積極的に認識していくことではないでしょうか。
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