効率的な勉強法――
だれでも一度はどんなやり方で勉強するのが良いか考えたことがあるのではないでしょうか。実際にそれは学生時代、それから社会人になってから何かを学ぶ際に重要でしょう。巷にも「○○勉強法」といった内容のネット記事や書籍が多くあります。
しかしながら、かなり知られた勉強法や概念の中でも、一見妥当に見える、あるいは正確に語られているようでも、実はかなり誤解が多いものも存在します。
今回はエビングハウス(「今日のことば」)の忘却曲線というものを考えていきたいと思います。
エビングハウスの忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線という言葉をご存知でしょうか。中学生や高校生の時などに、塾や学校などでその時の先生に教えてもらったという方は意外と多いのではないかと思います。
エビングハウスの忘却曲線を「適用」すると、人は何かを覚えた直後はほぼ100%の内容を思い出せる一方、20分たつと60%以上が忘れられ、記憶後1日までに3分の2が忘れられるが、それ以降は急激に記憶の減少が緩やかになり、2日後と1か月後では記憶内容の量はほとんど変わらないという結論になりそうです。
ここから、何かを暗記したとしても1日以上経ってからチェックしてみる重要性や、覚えてから1週間などたった内容に関しては思い出せるのならもう時間をかける必要がないという旨が強調されることがあります。
エビングハウスの研究の実際
しかし、実はその研究でエビングハウスが記憶対象としたものは無意味つづりと呼ばれる語であり、意味のある語、つまり自身の経験や知識とは原則としてつながらないものを対象としていました。これは彼が記憶には経験や知識といった要素が強く関連し、純粋に記憶そのものの性質を研究するためにはそういった要素の影響を排除した方がよいと考えていたからです。
効果的な記憶方略
ここから考えると、英語の単語の学習など、規則性があるような対象の学習には、この研究はそのままでは一般化しづらいということが言えると思います。
この研究が示唆するのは、復習のタイミングなどというより、むしろ――これはエビングハウスも実際に強調していたことですが――何かを覚えるようなときはほかのものとの意味的な結びつきを意識したり、自分の体験などと関連付けたりすることにより、覚えた後すぐに忘却することを防ぎ得るということでしょう。
今日のことば
エビングハウス:19世紀に活躍したドイツの心理学者。1885年の著作に発表された記憶の研究が有名。彼は無意味つづりとよばれる意味をなさない文字の羅列による語を対象とし、記憶の減衰を調べた。それをグラフにしたエビングハウスの忘却曲線では、最初の24時間程度で記憶内容は大幅に忘却されるが、その後は減衰は緩やかになることを示した。Hermann Ebbinghaus。
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