2020年アメリカ大統領まで残り1ヶ月余り。
候補者による討論会も始まり、ついに大詰めを迎えてきましたね!
直前に今回の大統領選において重要な激戦州を一緒にチェックしてみませんか?
今回の大統領選の鍵を握る6つの激戦州のそれぞれの特徴をみていけば、今回の大統領選の見所がより深くわかると思います。
ペンシルベニア:白人労働者が鍵を握る!
ペンシルベニアでは2016年大統領選挙でトランプが24年ぶりの共和党候補者の勝利を成し遂げました。
ペンシルベニアは白人労働者の多い州で、伝統的に乳業が盛んな地域や、「フラッキング」という技術を利用したシェールガス・シェールオイルの採掘が盛んに行われている地域を含みます。
こういった産業の労働者にアピールをしてきたトランプは彼らの間で支持を確実にしました。
また、銃規制や避妊に関する問題におけるトランプの立場も、敬虔なキリスト教信者の多い地域でのトランプの支持に繋がりました。
インターネット戦略は裏目に出る?
ペンシルベニアはインターネットが普及していない田舎を多く含むので、SNSなどを駆使したインターネット偏重のキャンペーンはあまり成功しません。
そんな州で、トランプはどの様に4年前支持を伸ばしたのでしょうか?
ツイッターでの積極的な発言など、インターネットを重要視しているイメージの強いトランプですが、実は自身の様々なグッズなども数多く販売しています。
トランプのスローガンが掲げられたキャップなどを被り、結束感を高めることで田舎のトランプ支持者たちは勢力を伸ばしていったのかもしれません。
デジタル戦略において優れていたオバマを見習ったクリントン陣営は、巧みなデジタル戦略を展開する一方で従来の伝統的な政治活動に力を入りきれなかったようです。
しかし、ここ数年で共和党の劣勢がペンシルベニアで顕著になってきています。
2018年の下院選挙では民主党候補者が三席を獲得し、また州知事にも民主党候補者が選ばれました。
白人労働者に魅力的なバイデン
従来の政治家のエリートイメージと一線を画するジョー・バイデンは白人労働者にも魅力的に見えるのも民主党に加勢する要因の一つです。
労働者階級のアイルランド系カソリックの家族に生まれ、1984年以来初のアイヴィーリーグ卒ではない民主党候補者という人物像は、ペンシルベニア州の多くの有権者に親近感を感じさせるでしょう。
白人労働者にとって魅力的なのはトランプなのか、バイデンなのか?
彼らの動向が大きな鍵を握るでしょう。
ミシガン:再び高まる民主党への支持…⁉︎
ミシガンは民主党への支持が強く、1992年から2012年まで毎度民主党候補を大統領選挙において選んできましたが、2016年にはトランプがクリントンに対し僅差で勝利を収めました。
民主党の復活なるか?
しかし、2020年大統領選挙に向けた世論調査ではバイデンがトランプをリードしています。
2018年の下院選挙では2人の民主党候補者が勝利しました。また、同年に民主党候補者が州知事として圧勝しました。
ミシガンでの民主党の機運が再び高まっていることは間違いなさそうです。
重要なのはマイノリティー票!
2016年の驚くべきトランプの勝利の背景には様々な要因があると見られています。
しかし特に重要だった一因と見られているのが、デトロイト地域における投票率の低下です。
デトロイトには民主党を支持する傾向にあるアフリカ系アメリカ人が多く住んでいます。
投票率の低下は、保守寄りで両候補者を選びにくいと感じた有権者の存在が大きく影響したのではないかと考えられます。
しかし、バイデンはそういった有権者たちにとっても選びやすい候補者です。
アフリカ系アメリカ人からの支持も強い人物なので、投票率が上がる事を期待できそうです。
また、ミシガンにはムスリムが多く住む地域もあります。
バイデンがムスリムを意識したアピールをキャンペーンの一環でしている事などを踏まえると、彼らの存在もバイデンに有利に働くかもしれません。
存在感でトランプが再選…?
バイデンはオンラインを主軸としたキャンペーンを展開し、実際に訪れた回数は僅かです。対するトランプは集会を盛んに行い、圧倒的な存在感を見せています。
ヒラリー・クリントンがトランプにミシガンで敗れた理由の一つとして彼女がこの州に十分な注意を払っていなかったことが挙げられます。
2016年の教訓を踏まえると、存在感で圧倒的にバイデンを上回るトランプが再びミシガンで勝利するシナリオも否めなさそうです。
ウィスコンシン:注目すべき、人種差別抗議運動の震源地
ウィスコンシンでは1988年以来毎回民主党候補が勝利を収めてきました。
しかし、その流れを覆したのが2016年大統領選。共和党候補者ドナルド・トランプが勝利したのです。
経済的不安がどの様な決断を導くのか
従来のラストベルト地域の中のブルーステートというイメージが壊れたことで、ウィスコンシンに大きな注目が寄せられています。
ウィスコンシンでは製造業の低迷が長年人々の懸念となっていました。
トランプの経済面や雇用面における公約が4年前の有権者たちを揺さぶる要因になったのかもしれません。
また当時の民主党候補者ヒラリー・クリントンが選挙直前の期間にラストベルト地帯にあまり現れず、ウィスコンシンでの存在感が薄かったことも民主党離れを引き起こした原因とみられています。
今回の大統領選挙ではウィスコンシンの有権者はどの様な選択をするでしょうか?
任期期間に労働者に訴えかける業績を幾つか残したトランプ大統領ですが、その一方で現在のパンデミック下の経済の不透明感や中国との貿易戦争など、トランプ離れを引き起こす要素も数多くみられます。
また、バイデンはアメリカ製品の復興などに焦点をあてた数十億ドル規模の経済計画を提案しています。
世論調査の結果は様々ですが、トランプがリードしているものでもバイデンとの差がだんだんと縮まってきているものが多い様です。
特に、白人女性や大卒の有権者の間での支持の低迷が顕著にみられます。
人種差別問題が大きな鍵を握る
またウィスコンシンで忘れてはならないのが、ウィスコンシン州ケノーシャでジェイコブ・ブレイクという黒人男性が警官に銃撃された事をきっかけに全国に広がった人種差別に対する抗議運動ですね。
この事件を受けて両候補者はケノーシャを訪問しましたが、2人の立場は対照的です。
トランプが「法と秩序」を重んじ、抗議運動に参加する人々を非難する一方で、バイデンは「平等」を訴え、抗議者にも一定の同情的な立場を示しています。
2016年にトランプを選んだ白人労働者たちが今回はどの様な決断をするのか?
人種差別問題はどれだけ大きな鍵となるのか?
注目すべき重要な州ですね。
ノースカロライナ:繰り広げられる接戦…黒人票が鍵となる?
ノースカロライナは比較的共和党の支持が強い州。
2008年のバラク・オバマの勝利を除き、過去44年でこの州において民主党候補者が勝利を収めたことはありませんでした。
主要な世論調査では、バイデンとトランプの接戦がみられます。現時点ではどちらかの優位性を確信するのは難しそうです。
ではノースカロライナにはどの様な親トランプ・反トランプ要素また親バイデン・反バイデン要素があるでしょうか?
コロナ対策においてトランプは不利じゃない…⁈
ノースカロライナの住民はトランプのコロナ対策に対し、他州の住民に比べてあまり批判的に感じていないことが世論調査などでわかっています。
また、全国におけるキャンペーンと同じく、トランプはバイデンに比べて足繁く通い、存在感が強いのも要因の一つです。
オンライン戦略は失敗か?
前回の大統領戦では、当時の民主党候補者ヒラリークリントンが当州の重要性を軽視したことが敗因の一つして考えられています。
もしこれが民主党への教訓だとすれば、今回実際のキャンペーンよりオンラインでの戦略に重きを置いたバイデンの戦略はクリントンの二の舞になってしまうかもしれません。
実際、インタビューなどでノースカロライナの民主党支持者がもっとバイデンに実際に有権者と触れ合うことを求める声が多く聞かれています。
黒人票がバイデンを助ける?
バイデンに有利に働く要因として考えられるのは黒人票です。
ノースカロライナにおける大きな黒人コミュニティーの支持を固めることができれば、バイデンに大きく形勢が傾くでしょう。
現在、人種差別問題への意識はノースカロライナに限らず高まっています。伝統的に黒人からへの支持が高いバイデンにとっては強い後押しとなるでしょう。
副大統領候補としてアメリカ史上初の黒人女性であるカマラ・ハリス上院議員を選んだことでさらに黒人票を確保する動きに出ています。
フロリダ:ラテン系住民の動向に注目!
伝統的な激戦州であるフロリダでは、過去二回の民主党候補の勝利を覆し2016年にトランプが選ばれました。
しかし、2020年大統領選挙に向けた主流の世論調査ではバイデンの優勢が見られます。その差は小さいものですが、意向を未だ固めていない有権者が少ない事を考慮すると、バイデンの勝利は確実になりつつあると言えるかもしれません。
その一方で、フロリダにはトランプがバイデンを凌ぐ事が出来る要素があります。
それはラテン系有権者の支持です。
どうしてラテン系有権者の間でトランプへの支持が厚いのでしょうか?
キューバ系・ベネズエラ系の有権者
キューバ系アメリカ人とベネズエラ系アメリカ人の支持をトランプは確実にしてきました。
自国の暴政に対して強く批判的な立場を取ってきたトランプに人々は惹かれています。
またバイデンを「社会主義」とラベル貼りする事で、「バイデンが選ばれたら、アメリカが社会主義国家になってしまうかもしれない」という不安をトランプは巧みに煽ってきました。
共産党国家である故郷から逃れてアメリカへやってきた有権者達にとって、トランプの強い反共産主義・反社会主義の態度はとても好ましいものです。
プエルトリコ人の有権者
プエルトリコ人はラテン系の中でかなりリベラルな方だと見られています。
しかし、共和党及びトランプはフロリダ在住のプエルトリコ人に強くアピールできる要素を幾つか持っています。
まず挙げたいのは、フロリダ州のプエルトリコ人は経済的に余裕のある中産階級が多いという事。中産階級層はニクソン政権時から共和党が特にアピールするターゲットとしてきた階級です。
またプエルトリコ人には福音主義者が多くいます。経験な福音主義者として知られるマイク・ペンス副大統領と共に政権を切り盛りしてきたトランプへの支持は、宗教的な理由からも厚いといえるでしょう。
バイデンの優勢が現状見られるフロリダですが、その差はまさに接戦です。
ラテン系有権者の決断がフロリダの決断を決める大きな鍵になることは確実です。
大注目のポイントですね!
アリゾナ:ビジネスマンとヒスパニック系が鍵を握る!
アリゾナ州は伝統的に共和党支持の強い州です。
1952年以降一回を除き全ての大統領選挙において共和党候補者に勝利を与えていました。
しかし、年々アリゾナ州での民主党の支持が高まりつつあり、今回の大統領選挙ではついにバイデンが選ばれるのではないかと囁かれています。
主要な世論調査でも優勢を保っているバイデン。
では何故アリゾナ州での共和党離れが起こっているのでしょうか?
コロナウィルスによる経済的打撃
アリゾナ州では近年多岐における産業ビジネスがブームを起こし、高収入の雇用を多く生み出していました。
これは経済的余裕のある人々がアリゾナ州に流れ込むという事ですから、中産階級層をターゲットと見据える共和党にとっては好都合なはず。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大によって当州にもたらされた経済的打撃は、トランプ大統領のコロナ対策への低評価に繋がりました。
アリゾナ州の有権者は他州に比べ高齢層が多いのも、共和党への厚い支持の一因とされてきました。しかしそういった高齢の有権者の間でも、トランプへの支持は近年低迷しつつあります。
ヒスパニック系住民がどう出るか
アリゾナ州におけるヒスパニック系住民の割合は年々増し、今日では三分の一に迫るアリゾナ州の人口がヒスパニック系で占められています。
しかし、バイデンはアリゾナ州在住のヒスパニック系の間でなかなか支持を伸ばせていないのが現状。
彼らがどの様な決断を下すかが、アリゾナ州の決断に大きな影響力をもたらすことは否めないでしょう。
最後に
今回は特に注目すべき6つの激戦州についてまとめてみました。
皆さんも迫りくる大統領選に向けて、これらの鍵となる州の動向をチェックしてみてはどうでしょうか⁈
そして皆さんもニュースですでに知っている通り、つい先日トランプ大統領が新型コロナウィルスに感染していることが判明しましたね。
この衝撃の展開は大統領選挙にも大きく影響してくると思われます。特に今回の記事でも何回か触れたように、トランプはオンラインを重視したバイデンのキャンペーンと対照的に、足繁く様々な激戦州に通い集会などを開いていました。
この記事では今までの「実際に足を運ぶことでトランプの存在感が増し、有利に働いているのではないか」という評価に折々触れてきました。
しかし、結果として新型コロナウィルスに感染してしまったトランプ。今までの感染症の深刻性を軽視する発言などと共に、彼のこういったキャンペーンも非難の対象になると思われています。今まで彼を優位にしてきたと思われていたキャンペーンが、この一件で裏目に出てしまうのかもしれません。
激戦州の住民は今までの彼の新型コロナウィルスへの対策の評価をどう下すのか?
ここ数日で更に重要性を増してきたテーマだと思うので、是非皆さんも注意を払ってみてください。
引用
ケノーシャ訪問のバイデン氏、重傷の黒人男性と言葉交わすCNN 2020年9月4日
[スキャナー] 米大統領選が終盤戦へ…接戦州は波乱含み 読売新聞 2020年9月6日
トランプ氏、デモに揺れるケノーシャを訪問 破壊行為は「国内テロ」BBC 2020年9月2日
バイデン氏もケノーシャ訪問 警官に撃たれた男性と電話会談 BBC 2020年9月4日
Beaumont, Hilary. Trump Aims for Michigan Victory Over Biden, Seeking Another Upset.
Aljazeera. 2020年9月30日
Behrmann, Savannah. Cummings, William. Santucci, Jeanine. North Carolina presidential ballots are being sent out. What you need to know about Election Day. USA TODAY. 2020年9月4日
Cadava, Geraldo. How Puerto Ricans in Central Florida May Decide the US Election. The World. 2020年9月15日
Edelman, Adam. As presidential race narrows in North Carolina, voters say they want face time with Biden. NBC NEWS. 2020年9月7日
Farabaugh, Kane. Battleground State of Michigan Key in 2020 Path to White House. 2020年9月18日
Gutierrez, Barbara. Florida May Hold the Key to the 2020 Presidential Election. University of Miami. 2020年9月15日
Hagen, Lisa. The Battleground States: Wisconsin. U.S.News. 2020年9月2日
Russonello, Giovanni. Why Arizona Is Tilting Blue: ‘The State’s Clearly in Motion’. NY Times. 2020年9月25日
Sokolove, Michael. Will Trump Win Pennsylvania Again? NY Times. 2020年9月10日
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