4月12日とされた英国のEU離脱(Brexit)期限が目前に迫った11日、ベルギーのブリュッセルではEU緊急首脳会議が開催され、今年の10月31日まで離脱期限を延長することとなりました。
本来であれば、3月29日に離脱予定でしたが離脱交渉がまとまらず、4月12日まで延長され、更に今回の10月31日に延長されました。しかし、期日までに離脱が達成されるかは不透明な状況です。
離脱時の状況によっては日本にも少なからず影響があると予想されているBrexit。
この問題からは、民主主義や多数決の抱える課題が透けて見えます。
揺れる英国
そもそも英国がEUからの離脱を決めたのは、2016年の国民投票です。
皆さんはなぜ国民投票が行われたか覚えていますか?
背景には英国国民のEUに対する不満があります。具体的には、『移民の流入によって自分たちの仕事が奪われている』、という認識や、EUへの分担金額、EU組織の官僚体質やEUのルールが細か過ぎる、といったことなどです。
こういった不満からEU離脱の機運が高まり、国民投票が実施されました。
そしてその結果は、離脱支持は約52%、残留支持は約48%という結果となり、僅差で離脱が決定しました。
しかしその後、国民投票時のキャンペーンの中で不正確な情報が出回り、それが投票結果に少なからず影響を与えたりもしました。有名なものでは、『EUに毎週支払っている3億5千万ポンドを離脱すれば支払わずに済む! その分を福祉関係に回せる』という主張がありました。しかしこの3億5千万ポンドという数字は根拠に乏しく不正確な数字だったのです。
そして、このBrexitの国民投票で生まれた混乱は未だに収まる気配を見せていません。
多数決と民主主義
Brexitは民主主義や多数決が抱える課題をあらわにしました。
国民投票は直接民主主義の一つの方法ですが、Brexitを決めた国民投票では国民が不正確な情報に振り回され、また感情に訴えかける投票運動によって冷静で客観的な判断を下すことが難しい状況に陥りました。
また、投票の結果は離脱派と残留派がほぼ拮抗するもので、互いにほぼ同数の反対意見を抱えているにも関わらず、無理やり一つの意見に決定したことです。
このような状況では本来、議会において議員同士が議論しながら妥協点を探っていくものですが、国民投票という離脱に「賛成」か「反対」かという、2択の対決的な構図に陥りやすい手法を選んだ為に、妥協点を見つけることがより困難になっていると考えられます。
このような事態にならない為には、国民が感情的な判断に流されず、冷静で客観的な判断をくだすことができるような「場」を予め設けておく必要があり、また、選択肢を2つ以上提供することが求められるのではないでしょうか?
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