アメリカの選挙を動かす宗教パワー

米大統領選2020

あなたはアメリカに対しどのようなイメージを持っていますか?

ハリウッド映画やジャズなどの豊かな大衆文化や、自動車や電化製品などの耐久消費財。また政治的な側面でみると、自由主義や民主主義など、自由な政治理念が掲げられている印象があるかもしれません。

中でもアメリカにおいて宗教は大きなテーマ。時には政治や社会問題にも影響することがあります。そこで本記事ではアメリカの政治と宗教の関係性について解説します。

アメリカの宗教

アメリカ硬貨  

1セント硬貨や10セント硬貨でも、アメリカの硬貨のデザインを見てみるとわかることがあります。”IN GOD WE TRUST”(我々は神を信じる)という文字が刻まれています。毎日つかう硬貨に神への信仰を刻み込んでいるのです。これは、連邦議会で公式に定めたアメリカの国家の標語となっています。

アメリカ大統領就任式

アメリカは憲法で「信教の自由」を明示している国家ですが憲法に先立つ独立宣言では「人間は造物主によって創造された存在」と謳っており、大統領の就任式で「聖書」に手を置いて宣誓します。

上記、二つのことからわかるように、アメリカ人が実はことのほか宗教的な国民であることが分かります。世論調査をみても、「神の存在を信じるか」という問いに、アメリカ人の8割以上がイエスと答えるということが分かっています。

アメリカではキリスト教信者が多いですが、人のによってその信仰スタイルは下記のように異なります。

進歩派

キリスト教なんかもう関係ないや、という人びと。科学を信じる合理主義者で、ビジネスをやって、禅やヨガやニューエイジにも理解のある人々。

主流派

健全な常識人で、教会にもおおむね出席する、穏健なクリスチャンです。

福音派(エヴァンジェリカル)

聖書は「神の言葉」だと、信じている人々。進化論や天文学は間違っている、と決めつける極端な人びとも、なかにはいます。この福音派が最近、アメリカ政治の台風の目になっています。

他国との比較

キリスト教とは

キリスト教から神学から、哲学が生まれ、哲学から、自然科学が生まれました。文化技術や民主主義、資本主義も生まれました。このようにキリスト教は、西洋社会の発展に携わってきました。

しかし、アメリカと比べ、ヨーロッパの国々では,信仰の熱はとっくに冷めてしまっています。

フランス

元はカトリックだが、フランス革命で、縁が切れた。教会の建物は立派でも、日曜日はガラガラです。礼拝に行くのはいま、人口の10%足らずだそうです。フランスは、哲学の国になり、知識人は、信仰を持たないことを誇りにしています。

イギリス

英国国教会。ピューリタンがかつて大暴れしたのが嘘のようにおとなしいです。

ドイツ 

ルター派。公定教会(経費を税金で払ってもらう)なので、体制化しています。ヒトラーに協力した過去をひきずってもいます。

イタリア、スペイン、ラテンアメリカ諸国

カトリックですが、習俗や伝統の一部みたいになっています。

これらの国と比べると、アメリカのキリスト教は今でも活発的で、まじめに信仰している人びとが多いことが分かります。

なぜアメリカでは宗教が重要なのか?

それはアメリカ人は、もともと「移民」だからです。

移民した人びとは最初、故国の教会を持ち込むが、人気があるのはアメリカならではの教会でした。

様々な地域からから来た人びとが、兄弟姉妹と呼びあい、教会を移れば、人間関係をリセットし、新しいスタートを切ることができます。その考えが今でも続いているのです。

福音派とは

福音派という名の教会があるわけではありません。自分の教会に行くだけでは飽き足らず、体育館の伝道集会に出かけたり、ケーブルTVで宗教チャンネルを視たり、お気に入りの伝道師の著書やCDを買ったりします。

福音派の合言葉は「聖書は神の言葉」。「神の言葉」は絶対的であり、進化論も天文学も人の言葉なら、ただの意見にすぎなくなるのです。福音派にとっていいことは、聖書が唯一の真理となるため、情報世界が単純になることです。そのような理由から、聖書に基づいて、中絶禁止、イスラエル支持、LGBTはいけないという保守的な思考へと傾いています。

トランプ大統領と福音派

以前のアメリカでは、聖書を文字通り信じ、進化論を認めないキリスト教保守派は、政治には口を出さず、ひっそり信仰を守っていました。

しかし、フェミニズムや様々なカウンターカルチャーが降盛したことにより、そのような人々は、道徳的な危機意識から立ち上がり、政治運動の世界に踏み込み、共和党の巨大な支持基盤となりました。                

前回のトランプ大統領勝利の背景には、選挙1週間前の保守派の空前の大動員があったことだといいます。そこでは、トランプは保守派の最高判事は新たに任命され、同性愛や人工中絶を認めるアメリカ社会の流れが阻止できるという福音派が喜びそうな公約をかかげました。そして、トランプは大統領になると、希望通りに、保守派の判事を任命しました。また、在イスラエルアメリカ大使館のエルサレムの移転という、福音派を意識した政策を進めました。

そういった経緯から、福音派は、何があってもトランプ氏を見捨てないというとても強い意志を持っています。どんなときでも崩壊しない支持率の強さはそれを証明しているのです。また、間もなく始まる選挙においても、トランプ大統領の支持基盤は、福音派です。それに対し、バイデンの支持基盤は、黒人や高齢者です。また、バイデン支持者の中には政策に賛成しているわけではなく、ただ単にトランプ大統領が勝利するのが嫌だから、支持するという人もいます。

このように、宗教を巧みに利用し、票を集めることが、アメリカ選挙の裏側なのです。

トランプ氏とバイデン氏の宗教

トランプ氏はキリスト教プロテスタント宗派 長老派に幼少期通っていました。自身もクリスチャンであることをたびたび主張しています。

バイデン氏カトリック信者です。カトリックはアメリカ国内22パーセント程度。過去カトリック教徒でアメリカ大統領になったのはケネディのみです。

おわりに

アメリカ政治には、宗教が深く結びついています。アメリカ国民が信仰に照らして、いかなる政治を望むのかを考えることが、大統領選勝利のカギになるのです。

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