民主主義とは何か|文部省著作『民主主義』から考える

民主主義とは何か|文部省著作『民主主義』から考える

今回は私が紹介する書籍から民主主義の在り方を考察する。その本とは、文部省著作教科書の「民主主義」だ。

この本は戦後間もなく文部省によって教科書として書かれた背景がある。つまり、一定の政治的意図を含んでいる。それはこの内容が考察の対象から外されるべきことを意味しない。むしろ、当時の政治が描く民主主義の姿は翻って当時の政治そのものの理解を助ける。

加えて、民主主義の本質を精神的態度に求めている点も注目すべきだ。現代に議論を蘇らせてもその有効性が失われることはない。

今回はこの本の民主主義に対する考え方を引用して、その在り方を考えたい。

『民主主義』の政治的背景

この本は昭和23年の日本国憲法の施行をうけ、経済学者や法学者を集め中高生向けに教科書として配布された。

従って、独自の政治力学の影響下に置かれたことは想像に難くない。権力の配下である一つの省が主体となって、公教育の手段として用いられている点には留意しておきたい。

さらに具体的に言及すれば、GHQひいてはアメリカへの配慮から免れ得ていないだろう。

民主主義を「人類普遍の原理」と評しているように、戦後日本の民主化という目的を助けるための、民主主義に対する過度の理想化を見て取れる側面もある。

以上のようなことを留めて、この本に臨むべきである。

民主主義の在り方

さて、この本では冒頭に以下のような記述がある

民主主義の根本は精神的な態度に他ならないからである。それでは、民主主義の根本精神はなんであろうか。それは、つまり、人間の尊重ということに他ならない。

民主主義 著:文部省 |角川ソフィア文庫p17-18

今日の日本に反映してみると、確かに仕組みの上での民主主義は完璧とは言えないまでも、ある程度には整っているように思われる。

選挙権があり、報道の自由があり、言論の自由があり、選挙がある。

一方で「精神的な態度」としての民主主義がどの程度浸透しているかは疑問だ。

一つの指標として、投票率を挙げると戦後から低下傾向にある。2017年の衆議院選挙では53.68%であった

引用:総務省「 衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移」| http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

勿論、精神的な態度としての民主主義をひとえに投票率に求めることはできない。

それでも、民主主義の必要条件として典型である投票におよそ半分しか行ってない事実を民主主義とみなしてよいのだろうか。むしろ民主主義の減退という解釈はできないだろうか。

運動としての民主主義

もう少し精神的な態度としての民主主義について考えてみたい。戦後を代表する思想家の丸山真男はこのような言葉を残している。

民主主義というものは、人民が本来制度の自己目的化 ー物神化ーを不断に警戒し、制度の現実の働き方を絶えず監視し批判する姿勢によって、はじめて生きたものとなり得るのです。

日本の思想 著:丸山真男|岩波新書 p173

思うに本当の民主主義というのは、制度として完成されている上にあぐらをかいている状態では、既に失われてしまっている。

我々が民主主義という価値を守り、引き継いでいくと意志する以上は、その精神を絶やさずに「運動」として実践していかなければならない。

蓋しこのような意味での民主主義の忠実な全国民による実践は、いささかシビアと言わざるを得ない。ハイコストとの見方もできる。従って民主主義が完璧な理想であると言い切るほど自信も持ち合わせていない。

理想の政治形態とは何だろうか。これを一国民である私が問うのは実は民主主義的な構えの第一歩である。

【参考文献】

『民主主義』著:文部省|角川ソフィア文庫

『日本の思想』著:丸山真男|岩波新書

(2011)小田桐 忍 法哲学者はなぜ文部省著作教科書の執筆に携わったのか

総務省「国政選挙における投票率の推移」http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/ (2019/03/25最終アクセス)

吉良貴之『尾高朝雄と民主主義のためのノート』( http://tkira26.hateblo.jp/entry/2016/02/26/011301 )|(2019/06/15 最終アクセス)

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